プロンプト不要で誰もが使えるAIを目指すアップル。文章要約や校正はメニュー選択だけ。ChatGPTなどとは根本的に異なるアプローチに迫る

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Apple Intelligenceは、日々利用するアプリや機能に融合している。例えば文章の要約もテキストを選んでその場で「作文ツール」から「要約」を選ぶだけで作成できる(筆者撮影)

校正や文体変更でも同様だ。文中のくだけた表現をよりフォーマルに直したい場合、ChatGPTでは「この文をもっと丁寧な言葉遣いにして」といったプロンプトを入力しなければならない。
だがApple Intelligenceでは、メニューから「校正」や「プロフェッショナル(な文体で書き直し)」を選ぶだけで済む。

ここでの本質は、AIに命令を“書かなくてもいい”という点にある。
プロンプトを書く技術──いわゆる「プロンプト・エンジニアリング」──は、他社のAIでは前提になっている。だが、アップルはそのスキルをユーザーに要求しない。むしろ、そこを必要としないAIこそが「全ての人のためのAI」だと考えているのだ。

さらに、生成AIの誤情報(いわゆる“ハルシネーション”)にも配慮している。アップルはこの問題に慎重な姿勢をとり、あくまで“間違いが起きにくい用途”に限定してAIを導入している。文章の要約、校正、箇条書きへの変換、表形式への整理などがその例である。

また、こうした機能は独立したAIアプリではなく、Pagesやメモ帳、メールアプリなど、OSの標準仕様に準拠して作られたあらゆるアプリでシームレスに利用できる。コピー&ペーストの手間も、アプリ間の切り替えも不要。作業している“その場”でAI機能を呼び出せる。

アップルは絵を描くためのAI機能「Image Playground」も提供しているが、ここでもプロンプトは不要になっている。「犬」「人」といった単語を選んで入力するだけだ。そこで「犬」に「帽子」を被せたければ、新たに「帽子」という単語をあらかじめ用意されたリストから選んだり、キーボードからタイプして追加すると、それに応じた画像が生成される。複雑な文構造や表現技術は求められない。

画像生成のImage Playgroundもプロンプトいらず。あらかじめ用意されたキーワードを選択したり、入力欄に単語を入力するだけで画像の生成が始まる(筆者撮影)

スタイル変更もメニューから選ぶだけで済む。表現の自由度こそChatGPTより低いかもしれないが、逆にいえば、誰にでも扱えるようになっている。

WWDCでは、希望するユーザーはApple IntelligenceのImage Playgroundで、ChatGPTベースのより高度な画像生成を選べるようになると発表された。だがそれはあくまで“選択肢”であり、アップルの基本方針は、あくまでも「誰もが使えるAI」にある。

Apple Intelligenceは、どこまで“使えるAI”か

Apple Intelligenceが目指すのは、単なる知的な対話をするAIではない。
ユーザーの毎日の行動の中に自然に溶け込み、「手間を省き」「迷わず使え」「ストレスを減らす」ことに重きを置いた“道具としてのAI”である。

その姿勢は、通知やメールの処理、画像の認識といった、日々のちょっとした煩雑さに向き合う機能設計にも表れている。

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