東雲の湾岸タワマン繁栄で「キャベツも買えない」団地の旧住人たちが発生したワケ 「フード・デザート現象」起きる街で見えた30年後の光景
刑務所などの矯正施設から出所した人たちの社会復帰を支援する「更生保護」についての取材を、私はここ数年続けている。そうしたことからも、この店のことが気になってきた。
カウンターの隅に座って、お客にあれこれと話しかけている女性に、たぶんあの人がオーナーだなと当たりをつけ、声をかけた。
「そう、私がここのオーナーです」
取材の申し出をすると、彼女は快く引き受けてくれた。差し出した名刺には、「江東区更生保護女性会・常任理事、中澤照子」とあった。
街のことも聞きたいが、この肩書も大いに気になる。辰巳の団地に住んで50年以上という、まさに団地族の中澤さんは、この地域で長く保護司を務めてきた人だった。
その話もすこぶる面白いのだが、今回はタワマンの取材で来ている。保護司の活動について、ある程度お話をうかがったのち、辰巳の団地と東雲のタワマンについて、聞いた。
「こっち(辰巳地区)は高齢化が進んじゃってるけど、あっち(東雲地区)は若い家族が増えて、おかげさまで活気が戻ってきてる感じですね」

「ただ、こっちはこっちで、昔から住んでいる人が多いから、みんな仲が良くてね。助け合いの精神というのかな、そういうのでつながっていますね」(中澤さん)
団地の人たちは、買い物はどうしている?
私は、東雲と辰巳の両地域を歩いた印象をぶつけてみた。ひとつ気になることがあったのだ。辰巳の団地に住んでいる人たちは、毎日の買い物をどこでしているのかということである。
もちろん「cafe・LaLaLa」の下にあるワイズマートの品ぞろえは生活に直結していて便利そうだ。
しかし、他にはこれといった店は見当たらない。辰巳1〜3丁目には、1万人近い人が住んでいる。とてもこの店ひとつでまかないきれるとは思えないのだ。
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