《性的広告停止》で終わりではない!ネット広告「無法地帯化」で業界と広告主が向き合うべき大問題

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「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティの不足」などは前々から言われてきたことだが、「不健全なデジタル・エコシステムへの加担」「コンプライアンスのリスク」「組織ガバナンス・内部統制の欠如」など、「経営層が関与することの必要性」も訴えられている。やはり、ネット広告の荒廃は広告主の経営問題だとの考え方に立って作成されている。

あくまでガイダンスであり拘束力はないものの、総務省の会議でまとめられることの重みは大きい。広告を展開する企業の経営者は、もはや待ったなしと受け止めるべきだろう。

アメリカで先行する「PMP」の取り組み

では、経営者は具体的にどうすればいいか。広告出稿をPMP(Private Market Place)中心に変えていくことが実行しやすい対策だ。

PMPは運用型広告の一種ではあるが、掲載先を絞り込み、限定している。アドネットワークに対比するとプレミアムネットワークだと言える。

よく名前が出るBI.Garageの「クオリティメディアコンソーシアム」は、大手新聞社や出版社、一部の放送局で構成されており、それらが運営するネットメディアに広告が配信される。ここなら、得体の知れないサイトに広告が出稿されることはないわけだ。

広告主が出稿先をPMP中心に変えていけば、ネット広告の風景は大きく変わるだろう。アメリカでは、運用型広告の50%がPMPで占められるという。同程度を目指せば、まっとうなメディアにはまっとうな企業の広告が整然と表示されるようになるはずだ。そして、怪しいメディアには性的広告や汚い画像の広告が表示される。

これは結局、ネット以前のメディアと広告の「すみ分け」に戻るということだ。もともとの大手メディアはプレミアムな媒体として広告価値も高い。ネットで誕生したメディアも、質が高ければPMPに参加できるかもしれない。

逆に、質の低いメディアには安価なアドネットワークによって広告が表示される。メディアと広告がセットでゾーニングされれば、誰もが安心してメディアに接することができる。

こうしたネット広告の再整理は急ぐ必要がある。このまま進めばネットが本当に無法地帯と化し、うかつに接触できないうえに、企業も安心して広告を展開できなくなる。すると、ネットという情報空間が崩壊してしまうのだ。もはや、猶予はないと私は思う。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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