「7月に日本で大災害が起こる」「地震か、津波か…」――ネット上を騒がせる大災難の"予言"。もし外れたとしても、素直に喜べないワケ

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だが、本気で予言が当たると思っている人はかなり少数派だろう。科学的な知見から発生確率が高いと予測されている地震や水害などの自然災害は、予言がなくとも起こりうるのは当然であることを弁えたうえで、エンターテインメントとして消費している人々がほとんどだと思われるからだ。

けれども、予言そのものが人々の心理に与える影響を侮ってはいけない。

懸念される点は主に2つある。予言の当たり外れなどに関係なく社会に混乱をもたらす「予言の自己成就」と、予言が外れたことによってその信奉者たちに特有の変化が生じる「予言の失敗による認知的不協和(の解消)」である。

人々に特定の行動を誘発するメカニズム

まず「予言の自己成就(自己成就的予言)」(Self-fulfilling prophecy)は、人々が「ある出来事が起こるという予言」の実現を目指して意識的に努力を行うことによって、「その出来事が起こる可能性が高まる」事態を指す。

もともとは、社会学者のロバート・K・マートンが提唱した概念で、1930年代にアメリカで起こった銀行倒産のウワサによる取り付け騒ぎとそれによる経営破綻などから着想を得ている。

ここでのポイントは、まったく根も葉もないウワサであったとしても、人々に特定の行動を誘発するメカニズムにある。

前述のエピソードは大恐慌時代に起こったもので、経営状態に問題のなかったナショナル銀行が破産するというデマが広がり、それを信じた人々が預金を引き出そうとして殺到した結果、本当に倒産に追い込まれてしまったのである。

筆者は以前、コロナ禍のトイレットペーパーの買いだめ騒動について執筆したことがある(関連記事:デマで買い占めに走る人が何とか拭いたい恐怖)。

これは「新型コロナウイルスの感染拡大により、中国から原材料が輸入できなくなり、近いうちにトイレットペーパーがなくなる」というデマがSNSで拡散されたことが発端だった。

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