昔は「神童扱い」今は「社会の底辺に」東大卒の40代男性《アル中で警備員をクビ→イラストレーター》となった経緯と彼を支えた人たち

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齋藤さんの落書き用スケッチブック。このようなスケッチブックがぎっしりと詰まったカラーボックスが、狭いワンルームの壁一面に並んでいた(写真:著者撮影)

机の上に置かれたスケッチブックにも、動植物がびっしりと描かれていた。その多くは図鑑からの模写で、画力を落とさないため日課にしている落書きだという。

「1日絵を描かないだけで、線がふにゃふにゃになるからね。1日サボると元の線が引けるようになるのに数日かかるから、毎日、何かしらは描くようにしているんだよ」

「スポーツ選手と同じなんですね。ところで、これは何を描いているんですか?」

「メヒルギって知ってる? オヒルギとどう違うかわかる?」

このとき齋藤さんが描いていたのは、メヒルギというマングローブ植物の一種ということだった。

植物画の落書き。「絵を描くことを1日でもサボると線がふにゃふにゃになる」とのこと(写真:著者撮影)※一部写真を加工しています

現在、齋藤さんは専業のイラストレーターとして、書籍や雑誌の挿絵を描いて生計を立てている。かつて勤めていた警備会社(※第2回を参照)は2年ほど前に辞めていた。正確には、クビになったそうである。

不眠からアルコール依存症に

「現場で人手が足りなくなってね。24時間勤務に加えて3交代の勤務も頻繁に入るようになったんだ。就寝時間も起床時間も月を通してめちゃくちゃで、体内時計が完全に壊れてしまったんだよ。

眠れるときにしっかり眠らないと体力が持たないから、家で寝るときはいつもの寝酒に加えて町医者に処方してもらったマイスリーって眠剤を使うようになったんだけど……それからすぐにおかしくなっちゃった。毎晩、マイスリーを齧(かじ)りながらウイスキーをボトル半分は飲まないと眠れなくてね。

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