地元で生まれ育った三品さんがここで不動産業に従事し始めたのは20年ほど前だ。8年前に独立して三彦不動産管理を開業した。
「会社の名前、なんて読むかわかるかい?」
「ミツヒコですかね」
「それが違うんだ」
そういって三品さんは名刺を差し出した。三彦のとなりにふりがなが書かれている。かなり意外な読み方だ。
「こういう商売をしていると変な営業電話がかかってくるんだよ。この屋号を読めない電話は相手にしない。実際に会って名刺交換した人なら読み方がわかる。読めない営業電話は無視するんだ。そのためにこんな屋号にしてるんだよ」
三品さんはそう言って笑った。
「みんな言うだろうけど、この街のよさはやっぱり人情だよ。隣近所との付き合いが濃いからみんな仲良しだ。そのぶん治安もいい。家賃もまだまだお手頃だしね。シングルタイプなら6万5000円くらいからの相談だね。ファミリータイプだと10万円くらいから。
ここらへんはまだ風呂なしの部屋もあるのでそういう物件だったら5万円台から相談に乗るよ」(三品さん)
京島で部屋を探すなら私はこの人を推薦する。街のことを隅々まで知っているからだ。その際は電話でなく、直接訪ねてみること。なぜなら社長に会わないと屋号の読み方が分からないから……。だからここでも「三彦」の読み方は明かさない。
新築の木造長屋がある街
前に書いた通り、この街には古い木造長屋がまだまだ残っている。しかし時代と共に建て替えが進んでいるのも事実だ。
街独自の景観が失われていくことを惜しむ声は大きい。近年、住民たちは様々な方法で長屋の保存に乗り出している。
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