レースのカーテンで目隠しされたガラス張りのドアを開けると、縦長の店内にコーヒーを飲みながらお菓子をつまむお客さんたちの姿が見えた。

入り口寄りの席に座り、コーヒーを注文した。480円(税込)とリーズナブルな価格だが、一杯ずつ丁寧にサイフォンで淹れる。
他の客がはけたところを見計らって話を聞いた。今年80歳になるご主人の上林通晴さんは生まれも育ちも京島だ。

「ずっとサラリーマンをやっていたんだけど、定年後はこの店を居抜きで買ってやってるんですよ。店の名前もそのまま。アブロードの意味? 知らないんだよ。前の人がつけた屋号をそのまま使ってるんだよね」(上林さん)
店は夫婦で切り盛りしている。コーヒーと料理の担当はもっぱらご主人で、カウンターの外では奥さんが客の相手をする。「あたしがお嫁に来た頃の商店街は賑やかでね。歩いてたら人とぶつかってさ。毎日お祭りかと思ったよ」と奥さんが笑う。
「この街のいいところかい? やっぱり人だろうね。ご近所付き合いが残ってるから、困ったことがあっても相談する人がいくらでもいるんだ。ここは人情の街だよね」(上林さん)
不動産屋さんを紹介してもらうと…
ではせっかくだからと、私も相談してみた。
「このあたりで、お話を聞かせてくれる不動産屋さんはいませんか」
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