時間のパッチワーク「継ぎはぎの廃墟」の引力。地域全体が不思議空間、否応なく見せつけられる「廃墟×アート」の可能性《大阪・北加賀屋》

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外観はそれほど変わっておらず、古い長屋のままだが、建物裏側を見ると2つの異なる熟語が書き込まれたアートに彩られており、人目を惹く。

NAGAYArt
裏手から見ると変化がよく分かる。内部も1階はすべて壁を取っ払って改装されており、長屋のつもりで入ると驚くことになる(写真:筆者撮影)

それ以外にも南欧風の賃貸住宅の前にオオサンショウウオの立体作品が鎮座していたり、住宅が密集する一画に突如としてカラフルなアートと彫刻のある芝生のポケットパークが出現するなど北加賀屋は歩いて楽しい場所である。

立体作品「かすむ」
「かすむ」と名づけられた鐵羅佑さんの立体作品。絶滅危惧種であるカスミサンショウウオなのだとか(写真:筆者撮影)
キタイチパーク
廃棄予定だった芝生を利用して空き地に誕生したキタイチパーク。向こうに見える壁画アートはborutanext5によるもの(写真:筆者撮影)

特にアート、立体作品はあちこちに点在しており、中には人間より大きな女性の胸像まで。アトリエなどに使われている元空き家も多く見かけた。

未来の植物をコンセプトとした増田セバスチャンさんの作品
未来の植物をコンセプトとした増田セバスチャンさんの作品シリーズのうちのひとつ「New Generation Plant」(写真:筆者撮影)
女性の立体作品
《FOREGIN MATTER:’Sand in woman’》(異物:砂の女)と名づけられたREMA作の立体作品。粒子の径が1ミリ以下の砂で作られているそうだ(写真:筆者撮影)

一方で手のつけられていない空き家予備軍だろう、劣化した不動産もあるものの、さまざまな活用例が身近にある。空き家になっても使い方が見えていれば長く放置されることもないだろう。空き家は地域を変えることができる大きなピースのひとつなのである。

「廃墟×アート」の可能性は無限大

近年ではアーティスト以外の人がこの地域に関心を持ち始めているなどの動きもあり、北加賀屋は大きく変わってきた。2025年は4月からクリエイティブセンター大阪開設20年を祝してさまざまなイベントが目白押し。

アートイベントのほか、マルシェやサウナ、謎解きゲームなども行われるし、アヒルちゃんも登場するので、この機に訪れてみるのも一興。梅田からなら地下鉄で20分とかからない。「廃墟×アート」の可能性が実感できるはずだ。

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【写真】「見るだけで面白い」、かつての千鳥文化を伝える古い写真や現在の姿、そのほかに見つけた北加賀屋の面白いスポットなど(39枚)
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中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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