大阪・中之島で「歴史的建築と北欧の美食」に心惹かれる水辺散歩を “水都大阪”の魅力がぎゅっと詰まった街 【写真多数】
ここは元々図書館の閲覧室があった場所。2013年頃、府内では中之島図書館の今後のあり方について議論が始まった。「今の図書館機能を堅持しつつ、施設と周辺のエリアとがまるごと魅力のあるものにしよう」という指針が示されたからである。
さまざまな声が寄せられる中で、「憩いの場としてカフェが欲しい」との声が多くあがった。熱い要望を受けて、市はカフェを創設することになったのだ。そして2016年4月に「スモーブローキッチン中之島」が誕生した。

2階の角地にひっそりとある入り口。席数も40席と少なく、こぢんまりとしている。ところが訪れたその日は平日であるにもかかわらず入店を待つ人の列が絶えない。しんと静まる廊下の一角にある円椅子に、待ち客が整然と座る。
店内に足を踏み入れると目に映るのは琥珀色の照明がゆらめく客席。むき出しのガス管の雰囲気がノスタルジックな心持ちへと誘う。アンティークな萌葱色とクリーム色の塗り壁は、当時の建築物の流行色だったのだろうか。深みのあるダークブラウンの床には、木目のシワが刻まれており、年月の重みを感じる。
カフェを手がけるのは、大阪エリアですでに多数のカフェを営むエルワールド。店長の岩井麻夏さんは「店の立ち上げに関わった代表とスタッフたちで、“この歴史のあるクラシックな空間を生かすには、どんな店がいいのだろう?” と話し合い、テーマづくりから考えたそうです」と話す。
代表の脳裏に浮かんだのは、北欧。中之島図書館が持つクラシックかつモダンな建物、そして歴史のある背景と、北欧文化の持つ衣食住への豊かな価値観と、伝統を大切にする心が重なり合ったそうだ。そこで、北欧をテーマにしたカフェを開くことを決めた。

重要文化財に指定された建物は、まるでアンティークレースのような繊細さを持つ。その時その場所だから生み出されたガラスや扉、床材など、一度壊れると同じようには二度と復元できない。重要文化財と指定されているゆえんだ。だからこそ図書館の職員も、カフェのスタッフも細やかな神経を使いながら日々の運営と向き合っている。
「このような建物なので、まず火気類が使えないのです。その中で私たちが空間を生かし、お客様にとって美味しいな、魅力的だなと思ってもらえるメニューは何かと考え込んだときにたどり着いたのが北欧のスモーブローでした」(岩井さん)
日常の豊かさを重んじた北欧料理を味わう
カフェの主力メニューであるスモーブローとは一体どんなものなのか。
「スモーブローはデンマーク発祥のオープンサンドのことです。バターを塗ったシンプルなパンの上に野菜、肉、魚介類など具がたっぷり盛り付けられています」(岩井さん)
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