そのうえで、吉田は、「上からのポピュリズム」と「下からのポピュリズム」という重要な分類を試みている。前者は郵政三事業(郵便、簡易保険、郵便貯金)の民営化を推し進めた小泉政治を、後者は非正規雇用者による格差是正などを求めた「プレカリアート運動」を例に挙げている。
この分類を踏まえると、JA=「得をしている者」、国民=「損をしている者」という対立軸を作り出すJA悪玉論は、「下からのポピュリズム」といえる。
昨年12月に始まった財務省解体デモや、受信料をめぐってつねに火種がくすぶるNHK批判などにも同様の特徴が見られる。この場合において最も懸念されるのは、これらの「下からのポピュリズム」が「上からのポピュリズム」によって都合良く利用される事態だ。
特定の団体などを既得権益にまみれた抵抗勢力、敵対勢力と認定することによって広い支持を獲得し、その勢いに便乗して自分たちの目的を達成するのである。
さまざまな要因が複合的に絡み合っている
実際のところ、米価高騰は様々な要因が複合的に絡み合っている。事実上の減反政策の継続や農家の高齢化、近年の記録的猛暑などの気候変動、コロナ禍後の需要回復、さらには外国人観光客の増加やインフレなど、中長期的なものから短期的なものまでが影響を及ぼして複雑化させている。
そこにおいて上記の減反政策が典型といえるが、すでに多くの識者が厳しく論評している通り、農水省、JA側の問題も根深いものがある。しかしながら、結局のところ食料の供給体制の脆弱性に危機感を持って取り組まなかった政治の責任なのだ。
しかも、「自分たちの票田のことだけ」「次の選挙のことだけ」しか頭にない政治家たちの恐ろしいほど軽薄で鈍感な態度は、かえってその背後に何かしらの謀略があるかのような穿った見方を深めていく余地を与えてしまう。
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