米価高騰はただでさえ物価高にあえぐ家計を圧迫し、食生活に打撃を与えた。


3年ごとにおコメの消費状況を調べている民間調査では、「毎日2回以上食べる人」は5割弱と過去の調査と比べて減少傾向となり、おコメの摂取量が減少した理由を聞くと、「お米の価格が高くなり、購入量を減らした」が38.2%と最も多かった(お米の消費実態調査2025/2025年4月30日/マイボイスコム)。
今やコメの価格はパンを超え、パン食への移行すら促している。今年2月時点でごはん1膳分の価格は約57円となり、2年前のほぼ倍近くに上昇。
一方、6枚切り食パン1枚は約32円で、4枚切り食パン1枚は約48円となっている(「おコメが高いから、パンにしました」ってホント?食料安全保障と農業のキホンの「キ」(8)/2025年4月3日/三菱総合研究所)。
貧困層はもっと深刻だ。NGOの調べによれば、35%の世帯で子どもが十分な量のコメを食べられていない可能性が高いことがわかった。1年前に比べて3倍近くも増加しており、物価上昇によって子どもの健康な発育への影響が懸念されるという(日本/子どもの貧困問題解決/セーブ・ザ・チルドレン/2024年12月12日)。
急激に広まった“JA全農に対する批判”
3月下旬から始まった備蓄米放出でも事態は一向に好転せず、問題発言が原因で大臣の首が飛ぶというオチがついた。だが、1つだけはっきりとしたことがある。誰も真に国民のことを気にかけていないということであった。その事実がひたすら人々の神経を逆なでしている。
そして、JA全農に対する批判が急激に広まったのは、「一部の既得権益層が米の価格をつり上げている」という疑心暗鬼が強まり、犯人を特定したい欲求が高まっているからだ。
これは、非常に危うい兆候といえる。人々の民意が少数のエリートや既得権益層によって侵害されていると主張するポピュリズムを台頭させる絶好の機会になりうるのだ。
政治学者の吉田徹は、「持てる者と持たざる者、資本家と労働者といった『右』と『左』の対立ではなく、むしろ既存の法やルールに守られている者とそうでない者、得をしている者と損をしている者という、もう一つの分断線が引かれることになる。この分断線がポピュリズムを呼び込むのである」と述べた(『ポピュリズムを考える 民主主義への再入門』NHKブックス)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら