「高齢者こそたんぱく質をとり、筋肉をつける必要がある」 医師が指摘する"筋力低下"の深刻な末路

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筋肉が衰える速さは、宇宙飛行士を思い浮かべていただくとわかりやすいでしょう。使命を終えた宇宙飛行士が地球に帰還したとき、みなさん無重力生活で筋力が落ちてしまい、周囲に支えられなければ歩けない状態になっていますね。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のライフサイエンス部門の責任者だったジョーン・ヴァーニカス博士の研究によると、6カ月宇宙に滞在していた宇宙飛行士は、平均で1週間に0.5〜1%もの筋肉量が失われていたといいます。

無重力と同じように、筋肉にほぼ負荷がかかっていない状態が、じつは私たちの生活のなかにあります。それが、ベッドや布団で横になっているときです。つまり、横になったまま動かない生活を送っていると、宇宙にいるのと同じような恐ろしいスピードで筋肉が衰え、自分の意思では動けない「寝たきり」状態にすぐになってしまうのです。

そのためたんぱく質やBCAAをとり、筋肉をつけてよく動く体を維持することは、要介護予防・転倒予防・認知症予防に欠かせません。

老後を元気に過ごすには「貯金」より「貯筋」

もう1つ、目を背けるわけにはいかない現実についてお伝えします。

65歳以上の1人暮らしの世帯数は年々増えています。2015年で約592万8000世帯だったものが、2040年には900万世帯近くになる見通しです。これは65歳以上の男性で20.8%、女性で24.5%にもなります。

4〜5人に1人の高齢者が1人で日常生活を送る社会が、当たり前にやってきます。いまはパートナーがいる方も、老老介護やパートナーが先に亡くなってしまう可能性を考えれば、自分で歩け、自活できるということはとても重要になるでしょう。

何より、「歩くこと」は「生きること」。自分の力で目的地へ移動し、出会い、感動する。最期の瞬間まで生き生きと自分らしく暮らすためには、歩く力が必要です。

ですが、日本人の「平均寿命」と「健康寿命」には約10年の開きがあります。さらに、2001年から2016年までの15年間で、平均寿命は、男性が2.91年、女性が2.21年延びているのに対し、健康寿命は男性が2.74年、女性は2.14年しか延びていません。

平均寿命と健康寿命の差はますます広がっていくばかり。これでは生活の質が下がり続けてしまいます。高齢者こそたんぱく質を正しくとり、筋肉をつける必要があるとお話しする理由の1つは、ここにあります。

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