デビュー15周年の松坂桃李「家庭を持ってから考えるようになったこと」。最新作で共演の”大御所俳優”との思い出も聞いた《独自インタビュー》

「この作品を通じて、“その時”が来たときのことを考えるようになりました」
まだ現実に起きてはいない。けれど、自分の両親が病を抱える可能性は誰にでもある。その時、どんなふうに受け止められるのか――この物語との出会いは、松坂にとって、ひとつの“心の準備”になった。
リアリティを重んじる松坂は、演技においても細心の注意を払った。
見る人が心にひっかかることがないように。役を通して語るからこそ、そこに宿る責任の重さを、彼は静かに受け止めていた。
演じた雄太は、自分の“あり方”を父に打ち明けた経験を持ちながら、なお心の整理がついていない人物だ。その揺れをどう表現するか、松坂は何度も自身に問いかけた。
「寺尾さんの芝居に“応える”ことが何より大事でした。現場では常に柔らかさを持ち続けることを意識していました」
ビジュアルにも特徴がある役だった。職業はイラストレーター。外見には自由さがあるが、内面には揺れがある。
「まず、その人がどんな気持ちでそこに立っているかを考えるんです。最初に登場するページ、その時の感情を逆算して、衣装や髪型のニュアンスを決めていきました」
父との関係性、仕事への姿勢、そして時間の経過。雄太の“今”がどんな過去から形作られているか――その全部が外見ににじむように、監督やスタッフと何度も話し合いを重ねた。
SNSの光と影、そして希望

物語のハイライトは、たった1本の動画から始まった。ドライブ中の車内。窓から差し込む光の中、父と息子が笑いながら歌う。アルツハイマーを患った父が、音楽を通して再び心をひらいた――。そんな“静かな奇跡”は、SNSを通じて世界中の人々の胸に届いた。
物語のカギを握るのは、まさにSNSという“つながり”だった。
「SNSは便利だけど、同時に危うさもある。自分の目で見たもの、耳で聞いたことを信じるようにしています」
情報が溢れる現代で、誤情報が真実のように扱われる場面も多い。だからこそ、松坂は“自分の軸”を見失わずに使うことを大切にしているという。
「特に災害やパンデミックの時期に、SNSで飛び交う情報がどれだけ混乱を生むかを目の当たりにしてきました。だからこそ、使い方には細心の注意が必要だと思います」
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