トランプの登場で蓋が開いてしまった「パンドラの匣」 果たして最後に"希望"は残っているのか
増田 日本の場合、現在は多党が並び立っていて、現政権は少数与党となっています。国会運営は苦労しているようですが、議論を重ねて妥協点を見つけようとしています。この様子を見ていると、強力なリーダーのいない少数与党も案外悪くないと感じます。
池上 歴史的に見ると、政治体制の耐用年数はおよそ70年と言われています。ソ連の社会主義体制も1922年に始まり、約60年後の1980年代前半からほころびが現れ、およそ70年目の1991年末に崩壊しました。
日本の政治体制も1955年に確立され、「55年体制」と呼ばれました。当時、自民党が多数派を形成しながらも、憲法改正に至るほどの議席数ではなく、社会党が二大政党のもう一方の柱を担っていました。しかし2025年現在、自民党は少数与党となり、社会党(現・社民党)も存続が危ぶまれています。
増田 アメリカの民主党も、かつては労働者の党でしたが、現在はエリート層の政党と見られていて、日常生活よりも多様性や価値観の話題ばかりを強調するようになったと、不満が高まっているのも事実です。
池上 歴史を少し長期的な視点で見ると、ヨーロッパでもアメリカでも、「国際化(グローバリズム)」と「自国第一主義(ナショナリズム・孤立主義)」が交互に現れ、まるで振り子のように揺れ動いてきました。
19世紀後半には、ヨーロッパ諸国が植民地を拡大し、自国の利益を追求する姿勢が激化し、第一次世界大戦が引き起こされました。
その反省を経て国際連盟が作られ、国際協調が進められました。しかし、1930年代の世界恐慌を契機に再び保護主義が広がり、その結果、第二次世界大戦へと至りました。その反省から、戦後にはEU、世界貿易機関(WTO)などが作られ、再び国際協調が強まりました。
しかし21世紀に入り、東西冷戦の終焉による急速なグローバル化、格差の拡大や移民問題、アイデンティティーの揺らぎなどを背景に、「自国優先」の流れが再び強まってきています。このように、国際化と自国主義は歴史の中で常にせめぎ合いながら、世界の政治や経済を形作ってきたのです。
思い起こされる「イラン・イスラム革命」
増田 戦後、アメリカは、世界の潮流の中ではさまざまな点で最も進歩的な国という立ち位置でした。しかし、トランプ政権になってからは、自分に忠誠を誓う人物を登用し、科学やリベラリズムの否定、メディアの排除や大学への圧力など、中世に戻ったかのようです。