トランプの登場で蓋が開いてしまった「パンドラの匣」 果たして最後に"希望"は残っているのか

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しかし、自国民の労働者層からは「移民に雇用を奪われた」という不満の声が高まっています。他国からの移民を助けるよりも、まずは自国民が救われるべきだという意識が強くなっているのです。

池上 こうしたグローバリズムへの反作用として、イギリスはEU離脱というアンチグローバリズムの道を選びました。アメリカのトランプ現象も、同様にグローバリズムに対する反動として理解できます。

特にITや金融などの分野で極端なグローバル化を進めた結果、アメリカ国内には大きな格差が生じ、多くの国民の不満が蓄積されました。

トランプは、メキシコから合成麻薬フェンタニルが大量に流入していることを問題視していますが、アメリカ国内にフェンタニルへの需要があるわけです。社会の格差が広がり、未来に希望が持てない人々が麻薬に手を出しているのです。

本来ならば、国内の格差を解消する取り組みこそが喫緊の課題であるにもかかわらず、「海外からの輸入品を止める」「関税をかける」といった政策を進めています。このような政策は、物価の上昇を招き、一般市民の生活をさらに苦しくするという本末転倒な結果をもたらします。

増田 差別や格差を是正するDEI(多様性・公平性・包摂性)推進、性的多様性を尊重するLGBTQ+政策、地球温暖化対策、SDGs(持続可能な開発目標)達成なども、トランプによって次々に否定されています。

私たちは人権を当然の価値として守るべきだと思っていますが、世界には宗教的観点を含めてリベラル的な考え方を受け入れ難いと感じる人も多くいます。

池上 トランプ流の政治手法は、対立勢力を公然と攻撃し、敵意をあおるものです。国際社会から批判されても、「うちのことはうちでやる。外から口を出すな」といった姿勢を示しています。SDGsやLGBTQ+といったリベラルな価値観に対しても、トランプは「人間には男と女しかいない」といったあおるような発言をして物議をかもしています。

増田 一部の人には、こうした発言が心の中で思っていても公然と言えなかったことを代弁しているように感じられています。トランプは、世界が潜在的に抱えてきたさまざまな問題を表面化させた―まさに「パンドラの匣(はこ)」を開けてしまったのかもしれません。

旧来型の議会制民主主義にも限界が

池上 アメリカの共和党と民主党とのせめぎ合いを見ていると、政治体制のきしみも感じます。二大政党制は、現政権がダメであれば政権交代が行われることから、議会制民主制の1つの理想として評価されてきました。ところが、現在はアメリカや韓国のように社会に深刻な分断を生んでしまっています。その限界を露呈しているのかもしれません。

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