トランプの登場で蓋が開いてしまった「パンドラの匣」 果たして最後に"希望"は残っているのか

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トランプ自身は完全なリバタリアンではありませんが、ビジネス規制の緩和や小さな政府の主張といった政策には、リバタリアン的な側面が見られます。国民皆保険を目指した「オバマケア」を否定し、医療保険市場の自由化と医療費削減を打ち出しました。

池上 この流れの源流にあるのが「新自由主義」です。1980年代のレーガン大統領やイギリスのサッチャー元首相が推し進めた、「市場に任せればすべてうまくいく」という経済政策ですね。

政府の介入を抑え、民間の競争を促進することで経済成長を図るという考え方です。この方針は一部の富裕層や大企業に恩恵をもたらしましたが、その一方で、格差の拡大や中間層の不安定化といった問題を引き起こしました。

増田 その結果として、ポピュリズムが勢いを得たわけですね。

エリート層や大手メディアへの不信感が高まる中で、SNSの普及が情報空間を分断させ、人々は自分と同じ意見ばかりが目に入る環境に置かれるようになりました。こうした社会への不満や不安を、トランプは意図しているかわかりませんが、うまくすくい上げている。

過激で攻撃的な言葉を繰り出す彼を、多くの人々は「自分の声を代わりに叫んでくれる存在」として支持しているのでしょう。

池上 トランプ現象は、特定の政治家による一過性の事象ではありません。格差の拡大、社会への不信、情報空間の分断といった現代社会の根深い問題が背景にある現象であり、まさに世界的な潮流の一部なのです。

グローバル化の光と影

増田 こうした現象の背景には、20世紀末以降に進んだ「過剰なグローバル化」があると思います。

冷戦が終結し、ベルリンの壁が崩壊すると、ヨーロッパ諸国は統合への道を歩み始めました。通貨がユーロに統一され、人やモノが自由に行き来できるようになりました。また、中国は経済改革を進めて「世界の工場」となり、世界的なデフレが広がりました。

池上 グローバル化が進むと同時に、人の移動も加速しました。その結果、人道的観点から積極的に移民を受け入れてきたヨーロッパ各国では、治安悪化をはじめとする社会問題が深刻化しています。

増田 ヨーロッパやアメリカで移民問題を取材すると、大量にやってきた移民や難民と地域社会との深刻な摩擦や軋轢も生じています。移民は低賃金で過酷な労働環境、つまり自国民がやりたがらない仕事に従事しています。

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