20年で変わった働き方、変わらない仕事の本質 多様性を強みにするチームワークマネジメント

コミュニケーションがうまくいかないのは当然である
ヌーラボが2005年にプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」をローンチしてから、今年で丸20年。その中で同社が見つけた「チームを強くするためのヒント」とは何か。同社代表取締役、橋本正徳氏はこう説明する。
「この20年で起きた大きな変化の一つは、チームの多様性が高まったことです。プロジェクトベースでの働き方や、パートナー企業やフリーランスなど、社内外のメンバーでコラボレーションして仕事をするのが一般的になりました。
かつては同じ会社で働く仲間が集まって『上意下達』のもと、同一性の高いチームを組むことが多かったのですが、今はそうではありません。経験もスキルも違うメンバーが集まるようになった分、チームの複雑性が増したといえるでしょう。
ですから、メンバー間でコミュケーションがうまくいかなかったり、チームワークが育ちにくかったりするのは当然です。リーダーに求められているのは、『社外のメンバーも含め、ビジネスで大きな成果をあげるという目的に向けてチームをつくり、チーム全体を強くすること』だと考えています」

橋本 正徳氏
一方で、20年経っても変わらないこともある。それは「顧客にいいものを提供し、顧客と信頼関係を築いて、成果をあげる」ことの大事さだと橋本氏は語る。
「事業目標を達成するために、チームを強くしていきたい。そのときにまず大事なのは、理念やビジョンを共有することです。それに共感し、共に向かって進んでいける。そんなメンバーをそろえ、チームワークを生み出すことが必要不可欠です」
チームワークマネジメントの概念を提唱
では、チームを強くするためには何が必要なのか。その1つの答えが、ヌーラボが提唱している「チームワークマネジメント」だ。
これは、異なる所属や組織の人々が1つの目標に向かって協力するための考え方である。各メンバーがチームの掲げる目標とその中で自分が果たす役割を理解し、自主的にリーダーシップを発揮する。そこに、仕事やタスクを管理する「ワークマネジメント」の要素が加わると、チームワークマネジメントが成り立つ。

「目的と期間が決められたプロジェクトをマネジメントし、結果を出すためにはチームワークマネジメントが必須です。その大きな要素は5つ。『共通の目標を設定し共有する』『メンバーの役割を明確にする』『リーダーシップを発揮する』『コミュニケーションの設計』『心理的安全性を高める』です。これらは、チームを強くしていくための前提です。
こうしてメンバーの個性を足していけば、それが混じり合い、相乗効果で『1+1+1=1000』が生まれます。さらにそれだけでなく、『1+1+1=想定外の1』のように、想像もしていなかったアウトプットやアイデアを生み出すこともできる。これがイノベーションです」
楽しさや面白さを感じられる「情緒豊かなツール」
このチームワークマネジメントを体現しているのが、ヌーラボが提供するプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」だ。
Backlogは「誰が・何を・いつまでに」やるべきかを明らかにし、タスクの期限や担当者を明確に設定することで、チーム全体の進捗状況を手軽に可視化できる。さらに、情報共有のしやすさや透明性が心理的安全性を高め、メンバー同士が自然に相互扶助できる土壌をつくる。Backlogには、こうしたチームワークマネジメントの実践に役立つ機能がそろっている。
ローンチは2005年。開発当初は商品化する狙いはなく、当時エンジニアとして働いていた橋本氏が、新しい技術を身に付けるために試作したのが始まりだという。
「Backlogの開発に着手したきっかけは、仲間と3人でツールの受託開発を請け負う中で、私自身が常々感じていたことです。それは、一般に、設計の根幹に『楽しさ』が欠けているツールが多いということです。
それにより、ユーザーがツールを使うというよりも、ツールに使われる状態になっているのではないかと考えました。
せっかくなら、ユーザーが楽しく便利に使えるツールを私たちが作って、世に送り出したいと思いました。機能をわかりやすく簡素化し、インターフェースや配色もなるべく柔らかくすることで、非IT職の方々でもまったく無理なく使えるものにしたいと。そう考えて製品設計と開発を進めました」
橋本氏らは開発を続け、出来上がったのが現在のBacklogだ。この経緯があるため、Backlogは、ユーザーが楽しさや面白さを感じられる「情緒面」が大きな特徴となっている。
「ITツールですが、必ずしも業務効率を上げることだけを目的に作っていないのがユニークな点だと自負しています。多様性あるメンバーがワンチームで働くためには情報の透明性が必要不可欠。だからこそ、誰でも使いこなせるツールに仕上げました」
企業やチームを超えた「メンバー間の壁」が低くなる

Backlogを使うメリットはいくつもあるが、複数の企業をまたぐチームにおいて大きな魅力といえるのが、「所属やチーム、立場が違うメンバー間の壁が低くなる」ことだ。
「Backlogを使うことでチームワークマネジメントが促進され、メンバーがワンチームになれれば、心理的安全性が高まります。フラットな関係性になり、建設的な会話が生まれやすくなります。当然、プロジェクトも成功しやすくなるでしょう。
価格設定にもこの考え方を反映しており、ユーザー数に制限のない料金プラン※1を採用しています」
ローンチ後、着実に支持を広げてきたBacklog。地道に実績を積み重ねていった結果、2013年ごろから軌道に乗り始めたという。
「さらに16年ごろから世の中にクラウドが浸透したことでニーズが高まり、今では有料利用ユーザー数が140万人以上※2に広がりました。スタートアップから大企業まで、幅広い企業にご利用いただいています」
Backlogの強みは、プロダクト自体のクオリティーはもちろん、ベースとなっている発想がユニークで、独自性があること。そして、橋本氏をはじめとするヌーラボ全体に「もっとプロダクトをよくしたい」という思いがあることだ。これが、ビジネスとしての強さの根幹を成しているのであろう。
※1 安定した運用を維持するため、最大1万人までを推奨
※2 2024年9月末時点の有料契約内でBacklogを使用している利用者数の合計(契約者に招待されて同一スペースで使用しているユーザーを含む)
今でもずっと、スタート地点に立っている気持ち

メンバー同士のコラボレーション、そしてチームワークマネジメントについて考え、発信し続けてきたヌーラボ。その社名は、「Null(ヌル=無)」と「Lab(研究所)」を合わせた造語だ。何もない「無」の状態から、試行錯誤を経て、新しいものを生み出す研究所でありたいという願いが込められている。
「昔、3人でBacklogの開発を始めた頃を思い出すと、あれから、企業としてずいぶん拡大したなと実感します。でも、私は今日までずっと、『富士山の1合目』に立ち続けている気持ちです。
いつもスタート地点に立って、ヌーラボが率先してチームワークマネジメントを生み出す実験をしていきたい。そして、そのフィードバックをプロダクト開発に生かしていきたいです」
橋本氏が好きな言葉は、旧友が語ったという「進捗はすべてを癒やす」。チームで小さな山を1つ越えれば、自己肯定感が生まれ、「うまくいくかもしれない!」というモメンタムが生まれる。そうやって、いつか高みに登っていけるという意だ。
橋本氏は「Backlogの20周年は、ヌーラボにとっても大きなターニングポイントになる」とみている。
「最近は、AIが本格的にビジネスシーンに浸透してきました。BacklogにもAIを取り込み、AIがまるでチームの1人として働くような環境をつくりたい。そうすれば“Backlog 2.0”と呼べるような、革新的な世界をつくれるんじゃないかと思うんです。
ヌーラボは、新規事業創出プログラム『Nu Source(ヌーソース)』も始めました。いいプロダクトが生まれることが楽しみです。社内メンバーやユーザーはもちろん、そのほか多くの参加者と共に、最高のチームワークマネジメントをつくり上げていきたいと思います」
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