石橋貴明さん「咽頭がん」併発を公表。「食道がん」との関連、症状や治療法の違いは? ウイルス感染が原因になることも《医師が解説》

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石橋さんのように、食道がんと咽頭がんを同時に罹患された患者さんでは、治療をどのように組み合わせ、かつ機能(特に嚥下や発声)をどれだけ温存できるかが、極めて重要な課題となります。

とはいえ、こうした複雑な症例にも、治癒を目指して対応できるようになったのは、現代のがん治療が大きく進歩している証しでもあります。

ヒトパピローマウイルスと咽頭がん

注目したいのは、咽頭がんは喫煙・飲酒の影響が大きい一方で、特に中咽頭がんの一部には「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルス感染が原因となっているケースが増加している点です。

この傾向は、西欧諸国を中心に、若い人たちの非喫煙者の間で特に顕著で、近年では、日本を含むアジア諸国の一部でも同様の変化が見られるようになっています(※石橋さんがHPVによる咽頭がんであるということではありません)。

HPVは一般的なウイルスで、これまでに100種類以上が確認されています。多くの人が一生のうちに一度は感染しますが、自然に免疫によって排除されます。しかし、HPVのうち16型や18型といったハイリスク型のウイルスは長期間体内に残り、やがて前がん性の細胞変化を引き起こすことがあります。

注意しなければならないのは、HPVは皮膚や粘膜の接触によって感染するウイルスであることです。

感染経路の中では性行為が重要で、腟性交、肛門性交、オーラルセックスなどを通じてうつりますし、性器や口まわりなどの皮膚が触れ合うだけでも感染することがあります。出産時に母親から赤ちゃんに感染することも報告されています。

これまでHPVは子宮頸がんの原因として知られてきましたが、HPV陽性の中咽頭がんは男性に多く発症します。研究論文によると、女性よりも男性のほうが最大で5倍近く多いと報告されています。

この男女差は生物学的要因に加え、性的接触の傾向など行動的要因によって生じているようです。HPV感染が問題になるのは、女性だけではないのです。

このHPVへの感染を防ぐのが、HPVワクチンです。

HPVワクチンが登場した当初は、子宮頸がんの予防を目的に若年女性に接種が推奨されていましたが、現在では尖圭コンジローマや中咽頭がんを含む、複数のHPV関連疾患に対する予防効果が確認されています。

2011年には、アメリカ疾病予防管理センターが男子へのHPVワクチン接種も推奨対象に加えました。

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