石橋貴明さん「咽頭がん」併発を公表。「食道がん」との関連、症状や治療法の違いは? ウイルス感染が原因になることも《医師が解説》

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中咽頭がんは発症までに長い年月がかかるため、HPVワクチンによる発がん予防効果の全貌はまだ明らかではありません。しかし、すでに接種した男性では口腔内HPV感染の大幅な減少が観察されており、将来的に中咽頭がんの罹患率も下がると期待されています。

また、オーストラリアやイギリスなど、男女を問わずHPVワクチン接種を推奨している国では、HPV関連疾患の発症率が顕著に減少しています。

オーストラリアでは今後10年以内に子宮頸がんは「公衆衛生上の問題として排除できる」とまで予測されていますし、中咽頭がんも、そのあとを追って大幅に減らせる可能性があると考えられています。

男性にもHPVワクチンを

日本の最近の調査によると、2008年度生まれの女子におけるHPVワクチン接種率は約6割で、まだ改善の余地がある状況です。

さらに深刻なのは、HPV陽性の中咽頭がんの大多数が男性に発症しているにもかかわらず、男子への接種を促す公的メッセージがまだ不十分という現状です。

現在、男子へのHPVワクチン接種に対する助成制度が一部の自治体で導入され始めましたが、全国的な定期接種制度は未整備です。今後、国レベルでの制度整備が期待されます。

咽頭がんは、生活習慣、感染症といったさまざまな原因で形作られる病ですが、ある程度の予防策もあります。

不必要な喫煙や飲酒といった生活要因を見直すことはもちろん、咽頭がんで生じるHPVというウイルス性要因に対しては、ワクチンによる予防という選択肢もあります。

1回数万円で2回ないし3回の接種が必要なためそれなりの費用がかかるのと、まれですが副反応が問題になる場合もあるので、メリットとデメリットのバランスを考え接種の必要性を判断する必要があります。

HPVはもはや女性だけの問題ではなく、性別や世代、そして体の部位を超えて、がんのリスクを高めるウイルスです。このウイルスへの感染を防ぐHPVワクチンは、HPV関連がんの90%以上を予防できるとされており、数少ない「がんを予防できるワクチン」の1つです。

社会全体が、ジェンダーにとらわれないHPVワクチンの導入と、がんの早期発見の推進に真摯に取り組むことで、治療から予防へと流れを変えることができます。特に咽頭がんに関しては命だけでなく、声や嚥下、そしてその人の未来を守ることにつながることを知ってほしいと思います。

谷本 哲也 内科医

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たにもと てつや / Tetsuya Tanimoto

1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。

 

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