石橋貴明さん「咽頭がん」併発を公表。「食道がん」との関連、症状や治療法の違いは? ウイルス感染が原因になることも《医師が解説》
食道と咽頭は、解剖学的にも隣接しており、タバコやアルコールなどの発がん性物質に長期間さらされると、これら両方の部位に同時にがんが発生する可能性があります。
そのため、いずれか一方のがんが診断された際には、もう一方にも病変がないかを慎重に調べる必要があります。過去の集計によると、この2つ部位にがんが見つかる事例は1割前後とされています。
●原因
喫煙と飲酒は、食道がんと咽頭がんの両方に共通する主要な危険因子です。これらが組み合わさることで、リスクは単独のときより飛躍的に高まります。
長年の喫煙や飲酒は、のどや食道の細胞に慢性的な刺激を与え、がんにつながる遺伝子変異を引き起こします(なお、「食道腺がん」と呼ばれるタイプの食道がんでは、慢性的な胃酸の逆流(胃食道逆流症)や肥満が関連していると指摘されています)。
いずれも早期発見が難しい
●症状の違い
食道がんと咽頭がんのいずれも、初期には目立った症状が表れにくく、かつ症状が似ているため、発見が遅れることがあります。進行してくると次のような症状が出てきます。
食道がんは、最初は固形物の飲み込みにくさ(嚥下障害)として始まり、進行すると液体の摂取も困難になります。さらに、体重減少、胸の痛み、慢性的な咳といった症状も見られることがあります(関連記事:石橋貴明さん公表「食道がん」早期発見のポイント)。
一方、咽頭がんは、治らない喉の痛み、声のかすれ、耳の痛み、嚥下障害、首のしこりといった形で表れることがあります。かぜなどの感染症だと思って治療しても数週間以上経っても治らないので、専門医を受診して内視鏡検査などを含めた精密検査してみたら、咽頭がんだった――というケースが多いです。
●診断
食道がんと咽頭がんの診断には、いずれも内視鏡検査と細胞を採って調べる病理組織検査(生検)が基本となります。さらに、病変の広がりを評価するために、CTやMRI、PETスキャンなどの画像診断が行われます。
●治療
早期の食道がんであれば、内視鏡でがんを切除する方法や手術が選択されますが、進行例では抗がん剤治療や放射線治療に加え、食道を切除する大規模な手術が必要になることもあります。
一方、咽頭がんでは、抗がん剤と放射線を組み合わせる化学放射線療法が標準治療とされていて、手術は再発したケースやがん病変が残ってしまったケースに対して選ばれます。HPV陽性の中咽頭がんは治療に対する反応が良好であり、治療後の生存率も高いとされています(HPVについては後述します)。
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