日本の製造業「稼ぐ力」を伸ばす新スキーム戦略 DXも「個別工程のカイゼン」にとどまる実態

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ビジネスブレイン太田昭和 取締役 常務執行役員 野田 久人氏
製造業では人手不足が深刻化している。人材の獲得競争が激化する中、競争力をつけ「稼ぐ力」を伸ばすために、どんな施策が必要か。その一つが、組織がシームレスにつながるデジタルの実装だ。それを実現するべく製造業向けのスキーム構築を開始した、ビジネスブレイン太田昭和(以下、BBS)の取締役、野田久人氏に話を聞いた。

「個別工程のカイゼン」にとどまる製造業のDX

大企業はもちろん、中小企業においてもDXの重要性は高まっている。経済産業省「2024年版 ものづくり白書」(※)によると、従業員数300人以下の中小企業に限っても、83.4%がデジタル技術を活用している。

しかし、製造業におけるDXは、その真の価値を発揮できていないのが実情だ。製造業ではいまだ「個別工程のカイゼン」に関する取り組みが44.1%と多く、「製造機能の全体最適」や「事業機会の拡大」を実施している割合は少ない。

DXの取り組み領域別 推進状況

同白書に記載されているとおり、製造業がDXの真価を発揮するには「製造現場の業務プロセスの全体像を熟知したうえでのデジタル実装」「『モノを作って売る』だけではない、ものづくりにおけるビジネスモデルの変革」が必要だ。

※経済産業省 厚生労働省 文部科学省「2024年版 ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)」

グループシナジーで、製造業支援スキームの構築に挑戦

こうした状況を受け、製造業の中核業務を支援するスキームを作り上げたのがBBSだ。同社は、昭和監査法人の創業者の一人である山﨑甲子士(きねお)氏が1967年に設立した企業である。

監査法人に原点を持つため、とくに経営分野に深い知識とノウハウを持つ。現在は、経営会計コンサルティングとシステム開発、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の3事業を軸に展開している。

同社取締役 常務執行役員の野田久人氏はこう語る。

「製造業は一般的に、製造部門(工場)が複数拠点に分かれていることが多いです。しかし、拠点ごとや部門ごと、業務ごとにそれぞれ独自のシステムを導入すると、データが分断されてしまい部署間での連携や包括的な分析、データ活用が難しくなります。

私は、こうした状況を改善できれば製造業の『稼ぐ力』をもっと伸ばせると考えています。バラバラになっているデータを1つのプラットフォーム上に集約し、一元化できれば、製造プロセスの全体最適や納期短縮といった本質的な課題解決に貢献できる。そうすれば、大きな付加価値を生み出せると思います」

ビジネスブレイン太田昭和 取締役 常務執行役員 野田 久人氏
ビジネスブレイン太田昭和 取締役 常務執行役員
野田 久人

とくに近年は、整合性ある情報に基づいてスピーディーに意思決定を行う「データドリブン経営」が求められている。製造業においては、設計から生産、会計に至る各工程を一貫し、デジタル上にまとめることがその第一歩となる。

「例えば、財務諸表に表れる数字について、その根拠を設計工程やBOM(部品表)にまで落とし込めれば、より詳細かつ緻密な経営分析、戦略立案を行えるようになります。こうした工夫が、データドリブン経営につながっていきます」(野田氏)

BBSは、各種データをリアルタイムで収集・分析して経営の意思決定に活用する「経営会計」のサポートを行っている。そのため、顧客の業種、業態は非常に幅広い。中でも製造業の顧客に対しては、長年にわたり、原価管理を軸とするサポートを提供してきた。

「当社はこれまで、経営会計と呼ばれる領域を中心にコンサルティングとシステム開発、そしてBPOという3つの分野でサービスを提供してきました。

製造業のクライアントにも実績は多く、2021年度以降、顧客数も売り上げも右肩上がり。24年度には約106.5億円の売り上げを達成し、手応えを感じているところです。

今回新しいスキームを作るに当たり、多くの日本企業の課題解決をサポートしてきた実績と、当社グループが持つシナジーを両方発揮できると考えました」(野田氏)

3社の「グループシナジー」で進化を図る

現在BBSグループは、M&Aなどを活用して事業ドメインを拡大し、グループの拡大を図っている。今回の製造業支援スキームに参画するのはBBSと同社傘下のPLMジャパン、そしてフレスコの3社だ。

BBSグループの経営会計

「2023年11月に行ったM&Aによって、CADを中心としたシステム開発を担うフレスコがBBSグループ入りしました。同社は、1990年の設立以来35年間で数百件の開発を経験し、優れた技術とノウハウ、実績を持っています。

それによりBBSグループとして、製造業のクライアント向けに、経営会計だけでなく設計開発から生産管理までカバーできるようになりました。現在は、製造業の設計開発から生産管理にまで支援領域を拡大し、シームレスに一気通貫でつなぐようなサービスを提供すべく、新たなスキームの構築に取り組んでいます」(野田氏)

そしてPLMジャパンは、製造業を中心にPLM(製品ライフサイクル管理)ソリューションを提供する企業だ。PDM(製品情報管理)やBOMの管理において豊富な経験と実績がある。経営的視点に立って問題解決を図るコンサルティング機能と、技術の高さを生かし、付加価値の高い支援を提供している。

「M&Aによるシナジーは、すでに生まれています。当社は会計分野を軸に支持をいただいてきましたが、最近はフレスコのグループ入りをきっかけに、現場の課題に特化したコンサルティングの引き合いが増えました。

当社は今、長期ビジョン『Goal2030』に向かって進化を図っています。企業のバックオフィス業務全般をサポートする『総合バックオフィスサポーター』として成長しつつ、企業経営を支える新たなサービスの拡充・推進を続けてまいります」(野田氏)

ローコード開発のニーズにも対応、稼ぐ力の向上に貢献

ビジネスブレイン太田昭和 取締役 常務執行役員 野田 久人氏

BBSは2022年にもM&Aを行い、BSCをグループに迎え入れている。BSCは、大阪に本社を置き、基幹業務のシステム設計や構築、ローコード開発に強みを持つ企業だ。

「BSCは主軸であるシステム開発事業の中で、『楽々Framework』シリーズというローコード開発プラットフォームを展開しています。一方、BBSは『intra-mart』というローコードプラットフォームを取り扱っています。

エンタープライズ系の開発では『intra-mart』、ローコード開発のニーズに対しては『楽々Framework』とすみ分けて、幅広い業種、規模のお客様に価値を提供してきました。このように社内でナレッジを共有することで、グループシナジーを発揮できると考えています」(野田氏)

大阪や名古屋といった大都市があり、かつ製造業が数多い西日本。そこで競争優位性を持つには、経営会計という確固たる強みに加えて、さらなるノウハウを磨く必要がある。BBSが今回、製造業向けスキームを構築したことは、このエリア戦略に連動したものといえよう。

「BBSは経営会計のスペシャリストとしての知見を基盤として設計から開発、生産管理までサポートすることで、製造業の『稼ぐ力の向上』に貢献し、お客様の成長を支え続けたいと考えています。

今、BBSグループのシナジーを発揮して、日本企業の『総合バックオフィスサポーター』として進化しているところです。コンサルティングからシステム開発、BPOまで、お困り事があればお声がけください」(野田氏)

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