「働くとみんな豊かになるのか?」 労働と経済の《黄金の循環》が終わりを迎えた歴史的な背景

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2つ目は、科学技術の発展により製造現場の機械化・自動化が進み、工場労働者の人数が減少していくなかで、人びとの新たなニーズ・欲求に応える形でサービス業が急速に拡大していったことです。

このサービス経済化は、人びとの働き方を、時間的・空間的に拘束された集団的・均質的なものから、サービスのニーズに沿った多様なものに変化させるものでもありました。

3つ目は、1970年代の石油危機、1980年代の規制緩和政策(レーガノミックス、サッチャーリズム)を契機とした国際競争の激化に加え、1990年代以降の情報化の進展によって、経済のグローバル化が世界的に加速したことです。

デフレ・スパイラルが起きる

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このグローバル競争の進展は、不平等の拡大(少数の高額所得者層に富が集中し大多数の労働者層の実質賃金は停滞する現象)や社会的排除(無業・失業が長期化し社会とのつながりを失う現象)という社会問題とともに、デフレ・スパイラルという経済問題を発生させることにもなりました。

さくら「いいことって、そんなに長くは続かないんですね」

真 由「こういう社会背景のなかで、日本では1990年代以降、『失われた30年』っていわれる経済の停滞が生じたんですね」

宇 野「最近の日本の『働き方改革』にもつながってる話だと思いました」

伊 達「そう。社会と経済と法律って、密接に結びつきながら動いてるんだよね。特に、世の中が複雑になればなるほど、どれか一つが単独で動くってことが難しくなるんだ」

水町 勇一郎 早稲田大学法学部教授

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みずまち ゆういちろう / Yuichiro Mizumachi

1967年佐賀県生まれ。90年東京大学法学部卒業。東北大学法学部助教授、パリ西大学客員教授、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員、東京大学社会科学研究所教授などを経て、2024年度より早稲田大学法学学術院・法学部教授。専門は労働法学。働き方改革実現会議議員、新しい資本主義実現会議三位一体労働市場改革分科会委員、規制改革推進会議働き方・人への投資ワーキング・グループ専門委員、労働基準関係法制研究会参集者等を歴任。主著に『労働法〔第10版〕』『集団の再生――アメリカ労働法制の歴史と理論』『労働社会の変容と再生――フランス労働法制の歴史と理論』『パートタイム労働の法律政策』(以上、有斐閣)、『詳解 労働法 第3版』(東京大学出版会)、『労働法入門 新版』(岩波新書)がある。

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