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<佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿98>スターリンは対独戦で神父のように国民に語った

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  • 佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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筆者がモスクワ国立大学哲学部科学的無神論学科で学んでいた1987年9月から88年5月の間に、ソ連共産党は宗教政策の見直しを行った。88年はロシアへのキリスト教導入1000年に当たる記念の年であった。そこでゴルバチョフ・ソ連共産党書記長は、自らが正教会で洗礼を受けていたことを明らかにし、宗教の自由化政策を表明したのだ。今になって振り返ると、この宗教の自由化政策がソ連のイデオロギー政策の基盤を揺るがすことになった。

多くの民衆がキリスト教信仰を捨てなかった

ソ連は科学的無神論を国是として、反宗教政策を徹底的に進めた。しかし、多くの民衆がキリスト教信仰を捨てなかった。この点についてベルジャーエフはこう記す。

ところが宗教的信仰は人民のあいだでは非常に盛んであり、政治的および経済的生活に結びついているいかなるものよりも盛んであると認められる。そして共産主義者が最も重大な敗北を喫したのもまさに反宗教戦線においてである。反宗教プロパガンダは、農民やはたらく大衆のあいだにおける宗教的偏見とか迷信とか呼ばれるものも勘定に入れねばならぬ。反宗教プロパガンダの方法はこれらのものを考慮に入れなければならぬ。

人は共産主義者、 党員の一人であって、しかも同時に信仰するキリスト者でありうるか? 人は共産主義の世界観をもつことなくして、弁証法的唯物論者、無神論者たることなくして、共産主義の社会的プログラムに参加することができるか? これが基本的な疑問である。(ニコライ・ベルジャーエフ〈田中西二郎/新谷敬三郎訳〉『ベルジャーエフ著作集 第7巻 ロシア共産主義の歴史と意味』白水社、60年、223〜224ページ)

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