そして、トランプ政権は(そしてロシアに近づくという独自外交を展開した安倍政権も)ここが間違っている。ロシアを手なずけること、合理的に交渉することは無理なのだ。ロシアをこちら側に呼び寄せ、中露関係を断ち、中国を包囲するということはリスクも高く、無理なのだ。そして、中国の方が、欧米よりも発展の余地はあるから、長期的な視野に立った行動が可能で、我慢比べでは欧米は勝てないのだ。
したがって、正しい戦略は、中露を分断し、ロシアをまず完全に解体することだ。ロシアを中国と分け合うことになっても構わない。ロシアという予測不可能なリスクを除いてから、中国に対峙するべきなのだ。
国内が分断しているアメリカは中国・ロシアに勝てない
しかし、現実には、この戦略は取られないし、取ったとしてもうまくいかないだろう。
理由は、ロシアは独裁者、中国は独裁政党により支配され、少なくとも政治的には国家が一体となって行動してくる。対外的な地政学的外交戦略においては、少なくとも短期的には一枚岩である。
一方、欧州は分断しているし、アメリカは国内が完全に分断し、政治的にはバラバラである。トランプ氏はそれを無視して、選挙後、一気呵成に、あたかも一枚岩として行動しているが、これは間もなく破綻するというのは冒頭に述べたとおりである。
そうなると、戦略は機能せず、ロシアや中国に、地政学的な争いにおいては実戦的には勝てない。ウクライナがロシアにつけ込まれたのも、これまでウクライナ内部で政権主導争いがあり、国内が一枚岩でなかったからだ。
集団的意思決定は、危機においては独裁に勝てない。独裁者となったトランプ氏に、常識を捨てきれない欧米社会は勝てないが、それは欧米においては持続可能ではない。そして、独裁のロシア、中国には勝てない。
日本は、集団的意思決定どころか、群衆SNS政治がはびこる、世界最低レベルの政治的主体である。日本の地政学的な未来は、日本経済の未来よりもはるかに暗いだろう(本編はここで終了です。この後は、競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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