したがって、アメリカはトランプ政権においても、その後の政権においても、新しい現実においては、ウクライナなどの小国の利益を無視するだろう。
ロシアという「危険な過去の大国」をどう支配し、現在と将来の大国の中国とどう対峙するかということだ。欧州は、今後まとまることで「1つの大国」のように行動できるかどうか。大国だけの利害で世界が動いていく。これが、新しい現実の下での行動原理だ。
では、日本はどうなるか。現在のままでは、アメリカは孤立主義の下、日本は利用する対象ではあるが、同盟国ではなくなる。中国との覇権争いをしているというアメリカの自己認識がある間は、アメリカの利害と日本の対中安全保障の利害は一致するだろう。だが、その後はアメリカにとっては、日本は「ただの」小国となる可能性がある。
「経済における国家の終わり」の時代が来ている
以上は、新しい現実であり、私の見方ではあるが、客観的事実に対する私の描写である。この現実の下で、さらに世界はどう動いていくか。ここからは、まさに私見である(がおそらく正しいだろう)。
アメリカは、遅かれ早かれ、中国に対抗することをやめるだろう。覇権を失い、またアメリカの世界への影響力が経済的利益をもたらす時代は終わり、超大企業が世界の利益を分け合う主体となっている今、中国と争う意味はない。これも新しい現実であり、「歴史の終わり」ならぬ「経済における国家の終わり」である。まさに孤立主義徹底で、国内経済、国内社会に終始するようになるだろう。世界の警察が割に合わないのと同じで、中国に無理に対抗してもベネフィットはないのである。
ロシアが欧州にとって21世紀の脅威である以上に、21世紀の後半に中国は、そのほかアジア諸国の脅威となるであろうか。ロシアと異なり、中国は圧倒的な力を持った状態で君臨するだけに、より怖いように思えるが、実際は逆である。
なぜなら、ロシアは衰退していく国。中国は、一頓挫あったが、まだこれから伸びていく国。前者はリスクも厭わず、暴君がギャンブルする可能性が高いが、後者はそれはなく、合理的に行動するはずだ。したがって、交渉のしようがあり、中国という大国に対峙するそのほかの小国としても活路はある。対ロシアではその論理は通用しない。だから、欧州はここまで恐れているのだ。
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