そもそも欧州からみれば、アメリカは「新世界」であり、別世界なのである。この結果、覇権国家は名実ともになくなる。同国の政治学者でコンサルティング会社の社長であるイアン・ブレマー氏が言い続けてきた「Gゼロ」の世界だ。
トランプ政権のウクライナ停戦仲介の真の目的は何か
一方、中国は、覇権を取れないだろうし、取りにもいかないだろう。中国の歴史において、アジアにおける覇権は中国のものであったが、遊牧民が支配している時代を除き、中国は膨張的な覇権主義は取ってこなかった。確かに時折は膨張の気配を見せることもなくなかった。例えば、15世紀には西洋膨張主義(つまり近代資本主義)の代わりに、中国が先に世界を支配する可能性もあった。だが、内憂で内政優先となり、その機会を逃した。
しかし、これは中国における、「普通の現実」であり、最近の「一帯一路」やアフリカ、太平洋島しょ国などへの拡大主義も、現在の内憂が存在するという状況からすると、結局は減退していくだろう。とはいえ、今後は、表向きは台湾、裏的には崩壊後のロシアを狙っていくだろう。あくまで近隣諸国から獲得していくはずだ。
一方、ロシアは崩壊する。旧式の武器と資源が膨大に残る危険な国、今の北朝鮮をさらに遥かに危険にしたような国へとなっていくだろう。
崩壊過程で暴発して終わるのか、内部から崩壊するのかは、わからないが、ロシアが崩壊した後には、世界は、残った資源を奪い合うことになる。その際、圧倒的に有利なのが中国だ。そして、それはすでに始まっている。
ロシアは欧米に経済封鎖をされ、資源を中国に売りさばいて外貨を獲得している有様だ。現状、着々と中国は資源を割安に獲得している。この動きに対しアメリカは、トランプ政権後を準備しているブレーンだけでなく、現在のトランプ政権のブレーンも、中国を利することを阻止するために、ロシアをこちら側に引き込む狙いを持っている。G7にロシアを呼び戻そうとするのも、その一環だ。アメリカの本音は、ウクライナがどうなっても構わないが、ロシアの資源が中国に向かうのを抑える。これがロシア・ウクライナを仲裁する目的だ。
だからウクライナのレアアースだけでなく、ロシアの資源を中国側ではなく、こちら側に渡させるような道を作り、現在だけでなく、将来にわたって、ロシアの資源を支配することを目的としている。そのときに、ロシアに対しては、資源の対価は十分に払って構わない。中国が得をしさえしなければいいのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら