ただ、これもいつものことだ。2008年のリーマンショックのときも、2020年のコロナショックのときも、実体経済は株式市場に振り回された。今回も同じだ。
しかし、今回違うのは、実体経済、実体社会の危機は、これまでのいくつものバブル崩壊時と大きく異なっている。前回の「『この世が終わった』のを知らないのは日本だけだ」(3月8日配信)でも書いたように、今は、この世の終わりの始まりなのだ。われわれは、これに備えなくてはならない。
トランプ氏は、多くの有識者の妄想と異なり、ただ、自分がディールを支配している快楽に酔っているだけだ。あるいは、ウクライナ戦争の停戦仲介によるノーベル平和賞狙い、割に合わない「世界の警察役」負担からのアメリカの解放、そして世界経済における最大消費者としての恩恵の見返りを外国には与えない、というトランプ氏個人と超短期のアメリカファーストの複数の目的で動いているかもしれない。いずれにせよ、この目論見は失敗に終わる。
「アメリカの覇権」は消滅する
だが、より問題なのは、この後だ。2026年の中間選挙後か、それとも2029年の「トランプ後」なのかはわからないが、いずれにせよ、もう少し長期的に持続可能な、しかし、アメリカファーストの「新しい現実」の下でのアメリカの行動原理にどう対応していくか、それにどう備えるかが問われているのだ。
ここで「新しい現実」をもう一度整理しよう。アメリカの孤立主義は復活する。世界の警察をする経済的メリットも余力もなくなり、アメリカ軍の睨みは世界から消え、世界中で紛争が現状よりも格段に増え、常態化する。アメリカの軍事的に覇権をとろうとする意欲は、最も警戒している中国に対しては残るかもしれないが、後述するように、あるタイミングで消えるだろう。
アメリカの覇権が消えると言っても、これはアメリカが覇権を握っていたのは、長く見積もってもこの100年程度のことであり、世界は以前の通常状態に戻るだけだ。
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