「就職氷河期世代」を貧困から救えるか…日本人の生活を左右する年金制度改正案の中身
要するに、現在の年金制度では、若い現役世代が将来的にもらえる金額が少なく、逆に年金受給世代がもらいすぎている現実があると考えていいだろう。それに加えて人手不足の問題があり、人手不足を補う意味でも年金受給者にも働いてもらおうというわけだ。
そしてもう1つ厄介なのが「106万円の壁」と呼ばれる、厚生年金加入義務ラインの変更だ。厚生年金には、企業が年金制度に入らなければならないラインがあり、これまでは「従業員51人以上、年収が106万円以上、週20時間勤務した場合」に、年金加入が義務付けられてきた。このうち「51人以上、106万円以上」という制限を撤廃する予定になっており、「週20時間勤務」に関してのみ継続する予定だ。新たに200万人の厚生年金加入義務者が増えることになる。
この改革案では、小規模企業などぎりぎりのラインにいた企業にとっては、大きな負担増になる。厚生年金の保険料は給料の「18.3%」で、企業と従業員がそれぞれ折半することになっている。従業員51人以下の企業は経営基盤も弱く、賃金の上昇分を価格転嫁できない現状では、厚生年金加入義務が免除されるラインがなくなった場合、企業側の負担が増えるというデメリットがある。
ちなみに、専業主婦などが加入する「第3号被保険者制度」は今回は改革を見送られた。廃止されれば、専業主婦といえども国民年金に加入せざるをえなくなり、月額1万7000円の年金保険料を支払うことになる。700万人が対象になると言われているが、労働環境に大きな影響を与えることになる。いずれはこの制度も改革が実施される可能性がある。
年金保険料値上げでは参院選を戦えない?
そしてもう1つのポイントが、厚生年金保険料の上限引き上げ問題だ。簡単に言えば、現在の厚生年金の保険料は「標準報酬月額」として計算され、月収65万円以上の人が支払う保険料6万5000円が最高額とされている。つまり月収100万円でも、200万円でも、年金保険料が6万5000円以上にはならない。
実際には、ボーナス時の年金保険料なども加味されるのだが、今回の年金改革では日額の最高額が75万円、79万円、83万円、98万円の4つの案が示されているが、月額にして9000円から3万円ほど増えることになる。厚労省の試算では、上限75万円の場合、保険料は月額9000円増えることになるが、20年間納付すれば厚生年金は月額1万円増えることになるそうだ。
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