「就職氷河期世代」を貧困から救えるか…日本人の生活を左右する年金制度改正案の中身
極端な話をすれば、非正規雇用の期間が長い就職氷河期世代を救うために、これまで働いて積み立ててきた厚生年金の積立金を、就職氷河期世代の年金に充てようという大胆な発想だ。いまや、年金の資源枯渇の問題は世界中で深刻化しており、日本の問題だけではない。
たとえば、アメリカの社会保障年金の基礎年金部分の積立金は、2034年には枯渇するとされ、韓国や中国も遅かれ早かれ年金資金の積立金の残高がゼロになるリスクを抱えていると言われる(「風見鶏 年金改革、『氷河期』に届くか」、日本経済新聞、朝刊、2025年2月2日)。日本の年金財源は、国庫負担を増やすことで解決したように見えたが、就職氷河期世代の貧困問題を考えると、そう簡単には解決できそうもないわけだ。
人手不足解消のため在職老齢年金と年収の壁にメス?
第2のポイントである「在職老齢年金」の改革は、「年収の壁」に関する改革同様に、近年の人手不足に対応する改革と言っていいだろう。在職老齢年金制度は、65歳以上で賃金と年金の合計が月額50万円を超えると年金が減額される仕組みだが、裕福な年金受給者に対する一定の歯止めとなっている。
その一方で、人手不足で必要とされている高齢者の就労を妨げる存在とも批判されており、月額50万円という限度額を引き上げる方針だ。年金を減らされるぐらいなら働きたくない、と考える年金受給者を少しでも減らしたい思惑がある。
厚生労働省の年金部会が示した案では、50万円の限度額を①62万円、②71万円、③制度そのものの廃止、を提案している。年金財源にも影響を与えることになるが、同制度を廃止した場合、現役世代の収入に対する年金額の割合を示す「所得代替率」が、マイナスになるという試算もあり、現役世代よりも年金受給額が高くなる現象が起きてしまう。
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