「就職氷河期世代」を貧困から救えるか…日本人の生活を左右する年金制度改正案の中身

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基礎年金は、すべての年金加入者が加入しているが、自営業者やフリーター、ギグワーカーといった国民年金に加入している人の年金受給額はかなり低く、全世代の年金制度の充実化を図ろうという意図がある。基礎年金の底上げを図って、年金で最低限の生活ができる体制にしたいわけだ。こうした底上げの原資は全体で135兆円。厚生年金から65兆円、国庫から70兆円が必要とされる。とりわけ国庫では、年間2.6兆円分の追加拠出が必要となり、消費税1%分に相当する。

自民党の一部議員は、こうした年金改革は将来的な増税をイメージし、国民の理解を得られないのではないか、ひいては参院選の結果に影響するのではないか、と声をあげている。厚生年金の財源を基礎年金にシフトすることには、企業側や働く側の労働者からも異論があるようだ。

背景には「就職氷河期世代」の貧困問題

それでも、厚生労働省がこの案に踏み切った背景には「就職氷河期世代」の貧困問題がある。現在のまま経済が推移すれば、非正規雇用の期間が多い氷河期世代は、4割弱が月額10万円未満の年金になると予想されている。月額10万円未満では、生活保護レベルの収入しかない。

いずれは大量の生活保護者を生むことになり、政府も財源の負担増につながる。今のうちに基礎年金の引き上げを行っておくことで、年金格差による貧困を減らそうという意図がある。

実際に厚生労働省の試算では平均的な賃金で40年間働いた場合、2026年度~2045年度までは、今の年金制度の年金額よりも最大で「月額7000円」少なくなる。

その一方で、2046年度からはサラリーマンがもらう基礎年金部分は、徐々に増額されていくことになり、2060年度には今よりも「月額8000円」多くなる、と試算されている。最大で7000円減額されて、最終的には8000円増えるという計算だが、34年という長い経過措置が取られる。

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