「ライバー刺殺」で見過ごされる"隠れた戦犯" 「都心で白昼堂々、20代女性が刺殺」「ライブ中継」は確かに強烈だが、氷山の一角かもしれない
また被害者や容疑者の背景が伝えられるにつれ、その複雑な関係性もまた、話題になっている。とはいえネットユーザーの大多数は、「どんな理由があろうとも、殺人はしてはならない」の論調だ。筆者もまた、同様の価値観を持っている。
被害者は、動画のライブ配信によって収入を得る「ライバー」だった。ライバーは視聴者からの「投げ銭」を収入にするパターンも多く、トークや歌唱・演奏、ゲーム実況など、その手段は多岐にわたる。
なお、「投げ銭」と言っても、大道芸のようにお金を直接渡すのではなく、有料アイテムを購入して、それをプレゼントする。そして配信者は、アイテムに応じた報酬を得る形が一般的だ。当然ながら、プラットフォーム企業は、その過程で手数料を取る。
参入者が増えるほど「カネになる虚像」が作られる
SNS時代になって、注目を集めるほどに経済圏が広がり、中心人物が利益を上げる「アテンションエコノミー」は定番化した。また、「スマホひとつ」で配信できるプラットフォームの登場により、誰しも稼げる可能性が高まった。
しかしながら、参入者が増えるほどに、少しでも収益を増やそうと、過当競争が起きる側面は否めない。ライバーのように、画面に出てくる人物に商品価値が必要な場合には、容姿の映像やメイクでの加工、ぶりっこ・過激発言などのキャラ付けなどにより、「カネになる虚像」が作られるケースも珍しくない。
虚像が大きくなるほどに、それを「演じる」生身の人間とのギャップは大きくなる。周囲から求められている(=カネになる)振る舞いと、本来の自分との差が開いていく。両者を割り切れるならいいが、公私を混同してしまい、キャラに「寄せて」しまうと、自我の崩壊にもつながりかねない。
先ほど「誰でも稼げる」と言ったが、それは逆に言うと、視聴者側の興味関心も細分化してきたことを意味する。かつては絶対に手の届かない「スター」に熱を上げる時代だったが、いまはスマホ越しのチャットや、オフ会などで、直接「推し」とコミュニケーションできる。
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