【医師が解説】普通の肺炎とどう違う?人気料理家・枝元なほみさんの死因「間質性肺炎」とはどんな病気か 「2カ月以上続く咳」は一度受診を

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その肺胞を取り囲んでいる壁の薄い組織が「間質」です。間質は健康なときは薄くて柔らかく、レントゲン写真ではほとんど写りません。

間質性肺炎とは、この繊細な組織である間質が炎症を起こして厚く硬くなり、肺の動きが徐々に制限される病気です。進行するとレントゲン写真でも間質が白く粗く写るようになり、線維化と呼ばれる状態になっていきます。イメージするなら、伸び縮みする風船のゴムが劣化して厚く硬くなり、窮屈で膨らまなくなるような感じでしょうか。

その結果、呼吸機能が低下し、息を吸うのが苦しくなっていきます。

●間質性肺炎のメカニズム

間質性肺炎では、主に次のような流れで肺に影響が起こります。

まず、何らかの原因によって肺胞の組織が傷つきます。原因がはっきりしている場合もありますが、むしろ原因不明な場合のほうが多いです。すると、肺胞の壁に炎症が起こり、肺胞の周囲の間質にダメージが生じて線維化します。

一度線維化が起こると、元には戻ることはあまりありません。間質が厚くなったせいで次第に酸素をうまく取り込めなくなり、呼吸機能がだんだんと低下していきます。

進行すると肺の組織はさらに厚く硬くなり、息を吸うのにも大きな力が必要となり、酸素不足で呼吸困難に陥ります。

じわじわ進行する呼吸困難

ウイルスや細菌の感染による肺炎は、急に発熱したり息苦しくなったりします。それは映画にもなった人気マンガ『はたらく細胞』の世界のように、体内の免疫システムが病原体と激しく闘うためで、多くの場合は抗菌薬や抗ウイルス薬で比較的短期間に改善します。

一方、間質性肺炎は年単位で少しずつ進行することが多い病気です。診断から平均5~6年程度で末期的な状態に至るとされ、枝元なほみさんがちょうどそのような経過をたどりました。

主な症状は、動作時の息切れや、痰があまりからまない乾いた咳です。症状の感じ方や表れ方は人によって異なり、ほかの肺の病気と似ているので、症状だけでは明確に区別できません。ストレスによる疲れや加齢現象として見過ごされてしまうこともあります。

ほかの症状としては、疲労感や体のだるさ、食欲不振、体重の減少、胸の不快感、息苦しさなどが表れます。これらの症状も初めは軽いものですが、次第に無視できないほど重くなっていきます。血管がもろくなった肺から出血することもあります。

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