「大分大学は『3』足りなかったという数字だけ覚えているんです。合格最低点まで3人が自分の前にいたのか、3点足りなかったのかは覚えていませんが、ギリギリ落ちました。
旭川医科大学はさらに惜しくて、自分の前に1人いた人が合格で、自分が不合格だったのです。そこで自分に国公立に行くセンスはないと思い、受かっていた大学の中から上位の私立大学医学部に入学しました」
こうして向かわな井さんは5浪を経て、私立大学の医学部に合格し、入学を決めました。
浪人してよかったことを聞くと「人間的に成長できたこと」、頑張れた理由については、「母親が応援してくれていたから」と答えてくれました。
「僕はそれまで目標なく自由に生きていたのですが、浪人をしたことによって、自分の行動に対する責任感が芽生えたと思います。僕自身には10代から20代前半くらいのころは、人に迷惑をかけたり、人から煙たがられたりするような雰囲気がありました。
母親は、『人間らしく生きてほしい』といつも心配してくれていました。浪人がつらかったら医者にならなくてもいいと思ってくれていたので、つねに自分を心配してくれた母親の存在がなかったら、浪人生活も頑張れなかったと思います」
目の前の勉強を楽しむことが大事
医学部に入ってからは医師になるために勉強をたくさんしたそうですが、その勉強を「楽しむことができた」と語る彼は現在、6年生。先日、医師国家試験に合格し、無事に4月から研修医になることが決まりました。
「僕は友達もたくさんいましたし、たくさん遊びました。でも、浪人をしているとき、結婚式に呼ばれないことや、女の子が相手をしてくれなくなったことなどを経験して、人はステータスがないと認められない部分があるんだと思えました。
弱い立場の人の気持ちを理解し、考えられるようになったのは浪人のおかげだと思います。とはいえ、身近で浪人することを悩んでいる人たちを見ると、『毎日楽しんだらいいのになぁ』とは思います。
浪人していることで周囲の目が気になるとか、大学に落ちたら周囲に馬鹿にされてしまうとか、悩む人もいますが、ゴールをいちばんに置くより、目の前にある勉強を楽しむことが、いちばん成績が上がるし、楽しいことだと思います。一日一日を楽しむのが大事だと伝えたいです」
たくさん遊んで生きてきた彼が5浪を経て得た、弱い立場の人への気持ちや、責任感は、これから彼が就く人命を救う仕事で、生きていくのだろうと思いました。
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