京都名物の「年1便・春分の日運行バス」。「乗り遅れたら、次は1年後」のバス成立の背景と、大混雑も「路線は年々減少」のワケ
大原を出たバスは2分ほどで左折し、ふだん路線バスが入らない江文峠方面に入っていく。このエリアはカフェや手打ち蕎麦の店、「里の駅大原」へ行く観光客が絶えないものの、大原へのメインルート(府道367号)沿いにある「野村別れ」バス停から1km弱とあって、年に1便しか走らないバスで訪問する人はいないようだ。
ほどなくして人家は途切れ、2台のバスはS字カーブの山道をはい上り、江文峠を越えていく。途中の「江文峠口」「江文神社前」「江文峠」バス停は、2025年現在で「年1本・片道のみバスが停車」となっている。
江文峠を越えた先にある人口約600人の「左京区静原」集落には、京都バスの別路線(34系統・54系統)が2時間に1本は乗り入れている。その先で入る鞍馬方面の旧道にも、鞍馬温泉行きのバスが1時間に1本、さらに鞍馬に行く叡山電鉄も並行……。
95系統は江文峠近辺以外、ほとんどの区間で代替のバス・電車があり、生活移動に関しては「なくてもそこまで困らない」状況ではある。
京都で「免許維持路線バス」が必要なのはなぜ?

95系統が廃止されない理由、それは「完全廃止せずに、バス路線の免許だけ維持するため」だ。最低限の運行だけ残すケースは全国各地であり、通称「免許維持路線」とも呼ばれる。
特に京都は年間7500万人が訪れる観光地であり、どのタイミングでどのスポットに人気が出て、どのバス路線が必要になるか、なかなか読めない。
さらに95系統の場合、大原はヒット曲「女ひとり」(歌詞の冒頭が「♪京都、大原三千院」)、大河ドラマ「新・平家物語」(1972年放送)などで、何度も観光ブームが訪れている。
かつ、鞍馬を舞台にした時代小説「鞍馬天狗」は戦前から60本以上も映像化されており、近年も2001年に松平健さん主演(フジテレビ)、2008年に狂言師・野村萬斎さん主演(NHK)でテレビドラマ化。そのたびに、鞍馬への来訪客の増加が見られた。どちらも「急に観光客が増加するかもしれない」要因を抱えているのだ。
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