不動産バブル崩壊で中国経済はまだまだ低迷続くのに、EV産業などは台頭!世界は警戒し、トランプ関税も重なり、誰も得しない未来が到来へ

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——財政均衡主義が強い中国ですが、2024年9月から積極的な金融政策や財政政策を行う方針が見え、3月11日まで1週間開かれていた全国人民代表大会(全人代)でも財政出動への言及が出ました。

梶谷:ようやく変わってきたところだろう。昨年(2024年)の全人代のときも景気が悪かったが、需要拡大は重要任務の3番目で、1番目は生産力向上という景気対策への意気込みが見られなかった。昨秋から預金準備率の引き下げや政策金利の引き下げなど実効性がある政策を打ち出した。

中国当局の財政出動にはまだ不足感

ただ財政政策では踏み込み不足だ。3%だった財政赤字の対GDP比規模を4%にすると発表したが、リーマンショック後の景気対策の規模はGDPの11.5%相当とされる。

また5000億元(約10兆3000億円)の国債を発行し、国有銀行への資本注入に使うと発表した。貸し渋りが発生しているといわれているため、迅速に対応しようとする姿勢は投資家への影響も考えると筋がいい。ただ、規模がこれで十分かは不明だ。

高口康太
高口康太(たかぐち・こうた)/1976年千葉県生まれ。ジャーナリスト、千葉大学客員教授。千葉大学人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。中国経済、中国企業、在日中国人社会を中心に各種メディアに寄稿。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)、『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)など

さらに昨年から行われている住宅在庫の地方政府買い取りと低所得者への提供も所得再分配や社会保障面の補完で消費底上げを期待できるので望ましい。ただ、原資となる特別債は建設投資などそれ以外の目的にも用いられることになっており、規模が十分ではない印象を受ける。

高口:昨年9月に一連の金融政策が出たときにはエコノミストや企業家などから「状況ががらりと変わる」という期待感が出て、実際上海株式市場の主要指数も一時上昇した。ただ、その後や全人代で出た内容を受けて、この規模で状況を変えられるのかという不安は生じている。

——中国経済の停滞が続く中、EVなど中国が強い産業が米中対立をはじめとした世界経済の論点ともなっています。中国が強いこれら産業の行方や世界経済への影響をどう考えますか。

梶谷:中国がEVなどの産業で強くなったのは、『ピークアウトする中国』内で「殺到する経済」として説明したように、政府がコントロールできないところで、無数の企業家たちがその産業に参入したからである。

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