不動産バブル崩壊で中国経済はまだまだ低迷続くのに、EV産業などは台頭!世界は警戒し、トランプ関税も重なり、誰も得しない未来が到来へ

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IoTがブームならIoTに、携帯電話・スマホがブームならスマホにと実業家が押し寄せて、競争する中で産業の足腰が強くなった。EVでも高級車から低速EVまで多数の製品が生まれ、優勝劣敗の中で品質や価格競争力が高まり、それに使われる車載電池など部品メーカーも集中して、サプライチェーンをはじめ製造業としての効率性が上がっていた。

世界に対する影響ではやはり米中関係がカギとなる。トランプ政権はアメリカの再工業化をしなければとの危機感から関税導入を行っている。一方で、バイデン政権が進めた産業育成策は前政権否定のために引き継いでいない面がある。

誰も得しない未来、地政学でビジネスチャンスを

関税は自国産業保護に一定寄与するが、現在の米中摩擦は労働集約的な産業で中国に比較優位があるからアメリカの雇用を奪った20年前のような状況ではない。製造業が中国に集中しすぎ、集中した中国の製造業がどんどん強くなり、アメリカと差を広げていることにある。

つまり、中国の産業基盤と差が広がらないようアメリカも産業育成策に取り組む必要があるが、その機運は見えない。逆にEU(欧州連合)は合理的に解決しようと、中国に関税をかけつつもEU域内で中国が工場を建設することを歓迎し、基盤を育成しようとしている。

アメリカの関税導入は製造業の競争で最終的に中国に利するところが大きい。ただ、中国としても国内需要が不十分な中、国際的に強くなる企業が増えると、それらの企業が産業に従事する人たちはより富裕になっても社会保障制度が整備されなければ取り残される人が増え続け、消費も伸びない苦しい状況に置かれる。トランプ政権が関税を引き上げ続ければ、このような誰も得しない未来が見えてくる。

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高口:不動産価格が上がらなくなったことで、消費が減退し、中国人民の資産が削られ続けて中国国内の需要減少につながる状況は今後も続いていくだろう。一方で、EVをはじめ新しいジャンルの製品を作る力は中国でどんどん高まる。全人代でもAIスマホを取り上げるなど、政府もそこに期待している。

そして需要が国内で低迷するので、新しい製品はどんどん輸出され、日米欧と貿易不均衡で対立し続け、それらへの対抗で関税導入など世界経済に大きな打撃につながるのは間違いない。ただ、中国一強の製造業に対応するのは再編のチャンスでもある。

台湾の頼清徳総統は2024年に就任した際に、アジアにおける自由な国々のドローン製造サプライチェーンの中心に台湾はなると発言した。米中デカップリングの状況が続く中で、先端製造業を用いた再工業化を各国・地域で行う機会ではないか。地政学問題を生かして、その中でビジネスチャンスを考える試みが日本にも必要な時代になっている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

東洋経済編集部員・記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。現在は、特集や連載の企画・編集も担当。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。早稲田大学台湾研究所招聘研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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