不動産バブル崩壊で中国経済はまだまだ低迷続くのに、EV産業などは台頭!世界は警戒し、トランプ関税も重なり、誰も得しない未来が到来へ

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その結果、不動産市場に資本が流入して合理的バブルが生じたと思われる。それに拍車をかけたのが社会保障体制の不備だ。中国では日本にあるような賦課方式の年金制度が十分に整備されていない。

賦課方式の年金は現役世代からお金を徴収してリタイア世代に回して、世代を変えながらそれを繰り返すというものだ。日本でも年金に対する不安はあるものの、経済成長が続く際、この制度であれば今払っている以上の年金を将来もらえると考えて国民の将来不安を一定程度、抑制はできる。

社会保障制度の不足が消費低迷の要因に

中国ではこれが十分に整備されていなかったことで、価格が上昇する不動産に投資して、リタイア後は値上がりした不動産に頼るという考えになっていた。つまり、不動産バブルが崩壊した今、将来不安が広がり、消費を抑えなければいけないと人々は考えざるを得なくなっている。

神戸大学の梶谷懐教授
梶谷懐(かじたに・かい)/1970年大阪府生まれ。神戸大学大学院経済学研究科教授。神戸大学経済学部卒業後、中国人民大学に留学(財政金融学院)、2001年に神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学)。神戸学院大学経済学部准教授などを経て、2014年より現職。著書に『中国経済講義』(中公新書など)。

一部の経済学者はこれまでがバブルとわかったから、実態に見合う価格まで下げれば需給バランスが整うとするいわゆるハードランディングをしたほうがいいという考えだ。ただ、私は脆弱な不動産に頼るのではなく社会保障制度の整備などを通して全体の消費を増やすことができるのが望ましいと考える。

——経済対策が進んでいない点で中国国民の当局への不満は高まっていますか。

高口:中国では世論調査などがないので、政府に対する支持率を可視化しづらいが、政府への不満は非常に高まっていると実感する。かつては経済も好調で汚職官僚の取り締まりで「習近平(国家主席)さすが!」の声もあったが、コロナ禍末期での混乱や不景気で「あいつ(習近平)さえいなくなれば、すべてうまくいく」と陰口を叩く人も多く出てきた。

昨年は中国で無差別殺傷事件が相次いだことが話題になった。中国の儒教的統治観・社会観でいえば、徳の高い皇帝が支配している状態ならばすべての人は楽しくちゃんと暮らせるはずで、そうでないから反乱との見方もある。本来あるべきしっかりした暮らしができない不満を不特定多数にアピールするというのは歴史的伝統の中に位置づけられる抗議手段ではある。

とはいえ、胡錦涛政権時代では、自分の苦境を訴える不特定多数がいる空間としてネットがあり、ひとまずネットに書き込むというのがあった。ただ、統制が厳しくなり、ネット空間でも愛国的な話しか残らなくなり、それ以外は削除されるとなると、わずかな可能性を信じてネットに訴える段階をとばして、直接暴力に走るという傾向になっている印象はある。

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