「トライアルの西友買収」でスーパーが激動する訳 九州発のディスカウント大手が狙っていること

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並行してイオンは、小型スーパーの「まいばすけっと」による大都市小商圏の獲得も進めていた。空き地の少ない京浜間の人口密集地にコンビニサイズで出店を重ねた、まいばすは、現在では売上高2500億円超にまで拡大。イオンのシェアアップを下支えする重要なチェーンに育ち、さらに成長を続けている。こうしたイオンの事例を踏まえると、首都圏でのシェアアップにはM&Aと小型店開発の併用が勝ちパターンということになる。

西友の買収に成功し、首都圏中心部に橋頭堡を築いたトライアルも、すでに首都圏投入用の小型店フォーマットを開発している。「トライアルGO」と名付けられたこの小型店舗は、常時リモート監視しながらリテールテックを駆使し、需要予測や自動発注、自動値下げ更新(ダイナミックプライシング)、顔認証セルフレジなどを活用した省人化運営が可能とされている。

(出所)トライアルHD 西友の株式の取得に関する説明資料 より

生鮮・総菜も近隣の大型、普通店から多頻度供給するサテライト方式なので、鮮度劣化がほぼないのだという。つまり、トライアルは西友買収に成功したことで、西友の既存売り上げを取り込むうえに、西友既存店を拠点とした小型店の大量出店を開始することが可能になったのである。

首都圏スーパーで伸びているのは?

首都圏中心部に展開する主なスーパーの、ここ5年ほどの売上高の増減を比較してみたのが次の図である。ディスカウントスーパー、オーケーが通常サイズの店で2000億円以上伸ばしているのが驚異的であるが、これはオーケーが店舗あたり平均売上高40億円(一般的他社の2~3倍)の販売力を持っているからできた数字なのであろう。

郊外型のヤオコーやベルクも大きく成長しているが、これは首都圏中心部ではなく、出店余地がまだある、郊外のロードサイドで大型店を展開してきた強みが大きいといえる。首都圏で5年増収率が最も高かったのは、67%の増収を達成した「まいばすけっと」だ。

都心や京浜地区だけで350店舗以上を出店し、売上高を1000億円以上伸ばしている。販売力のあるオーケーに伍して、コンビニと同程度のサイズであるまいばすがここまで拡大できたのは、小型ゆえに出店余地が多いからだろう。こうした動向を、トライアルも十分に把握していたはずだ。

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