「トライアルの西友買収」でスーパーが激動する訳 九州発のディスカウント大手が狙っていること

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トライアルは首都圏での認知度は低いが、思い返せば20年前のイオンも大して変わらなかった。当時のジャスコは総合スーパーとして後発、かつ地方出身だったため、首都圏の一等地はヨーカ堂や西友、ダイエーなどに押さえられ、存在感はなかった。

しかし金融危機後の総合スーパー再編によってダイエーやマイカルを傘下に収めたイオンは、首都圏で相応のシェアを手に入れた。さらにダイエーが出資していた食品スーパーとの連携を深め、USMHなどを組成して今では圧倒的なトップシェアを確立した。今回のトライアルも、西友を足がかりに首都圏におけるシェアアップを一気に進めていくことが可能になったのである。

首都圏食品流通の勢力図は変わるか

ウォルマートからファンドへと西友の経営が移り、再び投資の対象になった時点で、トライアルは西友買収とその後の戦略をシミュレーションしていたのではないか。既存店から供給するサテライト型小型店を開発して、大都市での出店体制を整備しつつ、上場を成功させて資金調達可能な財務基盤を整えた。そして北海道、九州の西友が売りに出たのは見送って、補完性の高い西友本体に資金を投下している。

リテールテックで「完全装備」したトライアルGOは、理屈のうえでは、イオンの「まいばすけっと」よりも小さな商圏にも対応できるため、より多くの場所に出店できる可能性を秘めている。

これまでは新規参入がしにくかった人口密集地に、価格競争力も高いトライアルがなだれ込んでくるとしたら、首都圏食品流通のシェアは大きく変わる可能性がある。論理的感想でなくて恐縮だが、このタイミングで西友を得ることができたトライアルは「持ってる」のかもしれない、と思ったのである。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、慶應藤沢イノベーションビレッジでベンチャー支援活動を開始、近年は地方創生支援活動も実施中。並行して、流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+ITなどで執筆、連載中。

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