また、救出する間口が広いフロントガラスを破壊する工程では、外から大きく砕くのではなく、ガラスを養生テープで保護した状態で、ドリルで1カ所に穴を開け、そこから特殊なノコギリで一気に切っていくというプロセスにも驚いた。

サイドガラスを破壊するため、隊員が特殊なハンマーなどを使って強い力で叩いても、なかなか割れない場合もあった。クルマを解体・破壊するのは、大変なことなのだ。
こうした解体救助の様子を見ながら、クルマの安全性の評価指標として、現在使われている予防安全性能、衝突安全性能、事故自動緊急通報に加えて、衝突時の救出に対する性能についても考えるべきではないか、という感想を持った。
必要とされる「リアルな視点」
JARIの代表理事・研究所長の鎌田実氏は「最近でも(関東圏内で)道路陥没事故や大規模な火災など、全国でさまざまな事故や災害が起こっている。そうした際の人命救助に対して、(警察や消防が連携するための)日頃からの訓練が大事だ」と、JARIが参加するこうした救助訓練の意義を強調した。
筆者としては、国が議論している防災庁においても、「クルマ×災害」について、今回の訓練に見られるようなリアルな視点での議論が必要だと感じる。

今年1月から始まった内閣官房防災庁設置準備室の「防災庁設置準備アドバイザー会議」では、ぜひ警察・消防・防衛省・日本自動車工業会・JARI・NASVAなどによる共通認識の確立と、それに関連したデータ統合システムの構築の議論を進めていただきたい。
今回の取材で「クルマ×災害」の厳しい現実を目の当たりにして、そう強く思う。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら