前述の土石流を想定した現場で地中に埋まっていた車両も、NASVAが自動車アセスメントで使用したトヨタ「クラウン セダン」。また、その隣の事故車想定の車両は、日産「セレナ」であった。
NASVAが車両を提供する社会的意義は、近年複雑化する車両構造に対して、隊員の実体験に基づいたデータを警察・消防で共有することにある。
最近の新型車は、衝突安全性能や燃費性能を両立させるため、軽量かつ高い強度を持つ高張力鋼板を多く使用している。また、電動車両では高電圧システムを採用しており、車両の解体救助において旧来のクルマとの違いを認識する必要がある。

これまでも、消防など向けに自動車アセスメントで使用した車両を提供した実績はあったが、今回のように6台まとめて使う大規模な訓練への提供は、NASVAとして初めてだという。
車両を「解体する」難しさ
訓練では、茨城県警察と水戸市消防局がそれぞれ2台を解体した。事前に、各隊が車両解体に関するテーマを決め、それを達成する手段を講じていく。
ただし、想定とは違う状況になることもあり、その場合は臨機応変に解体する箇所、順序、使用する機器を変えていたことが印象的だ。その模様は写真や動画のほか、書面に書き留められるなど、専門の隊員がデータ収集に努めた。
4台の車両解体を約1時間にわたり観察したが、解体に対する手間は、筆者の想像を大きく超えていた。

これまで新車の最終組立工場の現場を数多く見てきたが、今回のように大きく車両が変形した状態で、ドアやボディパネルを外すことがここまで大変だとは予想外だ。
たとえば、スライドドアの場合、車両が歪んでしまうと開閉が難しく、こじ開けることもかなり大変であることがわかった。
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