ただ、「国語」と「数学」の読み方に違いがあるということや、トレーニングで後天的に数学の読み書きを身につけることができるということが、単なる私の個人的経験なのか、それとも普遍性があることなのかはわかりませんでした。しかし、RSTの開発と普及によって50万人の受検者データを手にし、これを徹底的に分析することによって、みなさんに自信をもってお伝えすることができるようになったのです。
しかも『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』から7年ほどの間に、多くの自治体、教育委員会、学校現場のご理解をいただき、協働作業で子どもたちの読解力向上のノウハウについて研究・実践を続け、驚くほどの成果を上げることができました。鹿児島県の種子島にある西之表市の小学校では、全国平均を下回っていた全国学力テストの成績が、短期間で県内上位3位にまで向上しました。
そうした事例を踏まえ、AI時代を生き抜くうえでぜひとも身につけておきたい、「教科書を正確に読み解く力」を育むメソッドも見いだすこともできました。
学力と人生を決める「シン読解力」
人は自分の経験から物事を解釈しがちです。
50万人のデータを見ても、「読解力には読書ですよね」とおっしゃる方は減らないかもしれません。あるいは、逆に私が伝えようとしていることを「読書の効用を否定している」と受け止める方もいらっしゃるかもしれません。そこで、「教科書を読み解くために必要な読解力」のことを、一般的にイメージされている読解力とは明確に区別するために、「シン読解力」と名づけることにしました。
小学校では勉強もできてコミュニケーション能力も高くクラスの人気者だったのに、中学から、あるいは高校から急に落ちこぼれてしまう子が時々います。家庭や友人関係が原因だということもあるでしょうが、ある時点から急に勉強が苦手になってしまうというケースについては、「シン読解力」で説明できるかもしれません。
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