"離婚"寸前の「米欧同盟」に"復縁"の道はあるのか かつての蜜月がこじれにこじれた根本原因

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だが、足元の状況急変を受けて、欧州もようやく重い腰を上げようとしている。ウクライナへの侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するため、EUは3月6日、8000億ユーロ(約128兆円)規模の再軍備計画に大筋合意した。

また、英国のキア・スターマー首相は2月26日、トランプ政権の欧州安保への関与低下を前提に、英国とEUが欧州の国防費を確保するための「再軍備銀行」(仮名)設立に向けた話し合いを始めたと明らかにした。同国は2027年4月までに防衛費を国内総生産(GDP)比で2.5%まで増加させるという。

さらにフランスのエマニュエル・マクロン大統領は3月5日、国民に対するテレビ演説の中で「傍観者でいることは狂気の沙汰」と言及。欧州の防衛強化のため、保有する核兵器を含め、EU加盟の27カ国とともに防衛力を強化し、その財源も欧州全体から調達するとの考えを説明した。

そのうえで、モスクワは「北朝鮮の兵士、イランの装備」を動員し、「国境を侵犯し、欧州にいる反ロシア活動家を暗殺し、選挙を操作している」と糾弾。EU27カ国は「より良く自衛し、いかなる新たな侵略も阻止できなければならない」と主張し、「欧州の将来はワシントンやモスクワで決定される必要はない」との考えを示した。

米欧間の根底にある埋めがたい溝

今回のトランプ・ゼレンスキー会談は、外交において重要とされる根回しや裏交渉がトランプ氏には通じないことを見せつけた。

トランプ氏は前言を翻すことが多い。ゼレンスキー氏をホワイトハウスに迎えるとき、記者から「『ゼレンスキー氏は選挙を経ていない独裁者』と言ったが、考えは変わっていないか」と聞かれ、「そんなことを言ったか?」ととぼけてみせた。話す内容が変わることは外交交渉で不信を招くおそれがあるが、お構いなしだ。

さらに外交は通常、その国が政権交代しても継続性が尊重されるが、トランプ氏の場合は第1期ではオバマ氏批判、第2期ではバイデン氏批判を繰り返しており、前政権からの支援に関してウクライナに感謝を求めながらも、トランプ氏への賛美を欲した。ゼレンスキー氏はトランプ氏の周辺にはトランプ賛美者しかいないことを配慮すべきだった。

もう1つ注意すべきだったことは、アメリカ人には長い歴史を持つ欧州に対する強いコンプレックスがあることだ。グローバルなビジネス交渉に100回以上立ち会ってきた筆者は、何度もアメリカ人の不必要な強がりの背後に歴史的なコンプレックスが存在することを見てきた。ゼレンスキー氏はそのことを理解できていないように映った。

だが、ウクライナ戦争をめぐる対応について、欧州ばかりを責めるのも適切とはいえない。トランプ氏とゼレンスキー氏の激しい口論のきっかけをつくったJ・D・ヴァンス副大統領は、かつてウクライナ戦争について「ウクライナで何が起きているかなどどうでもいい」と言い放った。

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