「NHK辞めた敏腕P」フジテレビに転職した"動機" NHKでは報道記者も経験、なぜ民放のドラマPに?

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――第7話の「最後に人を動かすのは物語だ」というセリフは非常に印象的でした。「物語」が必要とされる時代、ドラマという物語を作っている方たちは何を思っているのでしょうか。物語はどうあるべきか。悪用されてしまう物語があるという現実をどう捉えますか。

「ドラマは作り方によっては安易に人の感情を操作したり、プロパガンダにもなり得る可能性があるとも思います。ニュースは基本的にはファクトを取らないと流せないですが、物語の形を取るドラマはある種の創作でメッセージを届けることができてしまいます。

ドラマ制作者である自分ができることは、なるべくプロパガンダにならないように注意をしながら、とにかく事実を積み重ねた先に物語として何を描けるかを考え続けることだと思っています。エンタメとしてのストーリー性と取材で集めた事実は時にぶつかることもありますが、やはり事実をすべて無視して作ってはいけないと僕は思っています。

そういうことを考えるようになったのは、脚本家の野木亜紀子さんと仕事をさせていただいた影響が大きいです。野木さんは『フェイクニュース』のときも『フェンス』のときも、一緒に長期間取材をして、現実をご自身も知ったうえで、リアリティを保ちながらエンターテインメントに昇華されています。取材した事実を入れ込みながら、エンタメとして楽しめる作品に仕上げてくださる唯一無二の作家であり、信頼しかないです」

日本一の最低男
『日本一の最低男』というタイトルに込められた思いとは……(フジテレビ提供)

間違っていると主張をすることは大切

――北野さんの作品はそうではないですが、中には主張がなく、作り手がどういう問題意識を持っているのか手応えが感じられず、作り手の意見をちゃんと聞かせて、とも思うこともあります。でも主張が強いと反対意見と激しい分断を生む。それこそ、北野さんは『日本一の最低男』で「対話」することを選択したわけですよね。

「もちろんまだまだ変化の遅い日本では、間違っていると主張をすることは大切だと思っています。ただ、バックラッシュ(揺り戻しや反動)が起きることもあり、とても難しい問題です。今回で言うと、脚本の蛭田さんが書かれた回はこれからの時代に必要な分断を乗り越えるためのヒントが描かれていると感じます。イチ視聴者としても、今後、蛭田さんがどのような作品を世に送り出されるのか楽しみです」

――北野さんはこれから、どういうドラマを作っていこうと思いますか。

「微力ではありますが、エンタメ性と社会性が融合した物語(ドラマ)を作り続けることで、少しでもよりよい社会を作ることに寄与できればと思っています」

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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