米国の対ウ「塩対応」を非難する人が知らない真実 いま改めて評価したいポーツマス条約の意義

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そもそもウクライナは国家であり、自由民主主義は政治思想である。同じものではない。単なるレトリックである。

そして重要なのは、ウクライナは自由民主主義のために戦っているのではなく、自国の領土を奪還するために戦っているということである。自国の領土を守るのは国家の義務であるが、それはウクライナ自身の義務であり、他国の義務ではない。また、国家には国民を守る義務があることも忘れてはならない。

今こそ「現実主義的な国際政治」が必要だ

最後に、今停戦すればロシアに有利に決着するので不公平だというものだが、まさにそのとおりと言わざるをえない。そのため、ウクライナは交渉で優位に立つための材料を必死で探し求めている状況である。それでも、事ここに至っては、いかんともしがたいのである。

侵攻前にミンスク合意が履行されていれば、ドンバス地域はウクライナの中の自治州でとどまっただろう。2022年の侵攻直後の停戦合意が実現されていれば、ザポロジエとヘルソンの2州はウクライナにとどまったはずだ。そして今、あまりに多くの犠牲が払われたため、双方ともに引くことができなくなってしまった。

トランプ大統領は「ゼレンスキー大統領が第3次世界大戦を賭け金にカードゲームをしている」と批判したが、これは核心を突いている。なぜなら、ウクライナは一国のみでロシアと対峙することができないからだ。

ウクライナは残念ながらすでに戦場となり破壊されているため、仮にNATO対ロシアの戦争が勃発したからといって、これ以上失うものは多くない。だが、欧州は壊滅するだろう。したがって、ウクライナの主張に寄り添い、歩調を合わせることは、あえて言うが、非常に危険である。

ヒロイズムではなく、現実主義的な国際政治が今ほど必要なタイミングはない。現実主義的な立場をとるものにとって、トランプ大統領の主張は突飛ではない。

ウクライナに武器を支援することは、そのまま戦争を継続することにほかならない。10年支援すれば戦争は10年続き、20年支援すれば20年続くだろう。こうした状況下で、トランプ大統領相手に臆することなく持論を展開したゼレンスキー大統領を勇敢だと称えて拍手を送るのは勝手だが、ある意味で無責任である。

ウクライナ国民はゼレンスキー大統領が持論を述べるのが見たかったのか。それとも、合意が成立するのを見たかったのか。ウクライナ国民の半数以上は、領土奪還を諦めても平和を回復したいという希望を抱くに至っていることを為政者は忘れてはならなかった。

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