米国の対ウ「塩対応」を非難する人が知らない真実 いま改めて評価したいポーツマス条約の意義

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ロシア国民がプーチン政権を恐れて本当のことを言えないのではないかと疑う向きもあるが、それは考えすぎである。この世論調査結果を出している機関自体が、ロシア政府から「外国エージェント」に登録されているくらいである。

次に、ロシアが国際法上の侵略国であるかという点だ。これはまあそうだろうという気がするが、事はそう単純ではない。国家主権は神聖不可侵とされているが、同時に人道や自衛権、自決権といった相反する価値があるからだ。

ロシアの論理構成はこうだ。ロシアは軍事侵攻の直前にドンバス地域のドネツクとルガンスクの独立を承認し、「国家間」の相互援助条約を締結した。これを踏まえて、集団的自衛権を行使し援助義務を果たすため、ウクライナで軍事作戦を展開したとする。

また、ドンバスなど4地域の併合については、住民投票の結果であり、住民の自決権の発露であるとしている。地域が所属する国家から独立する例は、これまでにも確かにある。代表的なものが、コソボのセルビアからの独立である。

ちなみに、コソボ関連では「人道」を理由にNATOも軍事介入したほか、コソボの独立を支持している。まさにドンバス紛争とパラレルな関係にあるわけだ。なお、ロシアはコソボの独立に反対している。

わが国には、安易にウクライナと日本を比べたり、北海道がクリミアのように併合されるのではといった懸念も聞かれる。だが、まったく事情も背景も違うので、同列に扱うことは不正確で無意味な議論を招くだけである。

領土拡大意欲は欧州のプロパガンダ?

3つ目に、ロシアはさらなる領土の拡大をもくろんでいるかどうかだが、その非現実性をロシアはよく理解しているだろう。ポーランドやバルト三国を占領して統治するだけの国力はどこにもないからである。

これも取り越し苦労である。というよりも、冷戦時の経緯を知っていれば、アメリカを欧州の安全保障に関与させておくための欧州のプロパガンダという見方さえできるだろう。

4つ目に、ウクライナを守ることが自由民主主義を守ることかどうかであるが、これはまったくの空論であろう。

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