米国の対ウ「塩対応」を非難する人が知らない真実 いま改めて評価したいポーツマス条約の意義

✎ 1〜 ✎ 185 ✎ 186 ✎ 187 ✎ 188
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このときは、ベトナム戦争を終結させ、アメリカ軍をベトナムから撤退させるとともに、中国と関係改善することでソ連を牽制することが目的だった。ウクライナをめぐるトランプ政権の行動とよく重なるではないか。ただし、今度は中国を牽制するためにロシアと関係改善しようとしている点で対照的である。

わが国では、米ウ首脳会談を受けて、アメリカは「偉大な国」とは程遠いとか、トランプ大統領はプーチン大統領に操られているといった批判も見られる。そうした批判の背景にある心理は「アメリカには日本やウクライナのような弱い同志国を守ってもらいたい」という願望ではないだろうか。

言い換えれば、アメリカは同盟国のために金や軍事力を使うべきだという主張である。これは非常にナイーブな感覚だと言わざるをえない。

ドイツ系のアメリカの政治学者ハンス・モーゲンソーは「弱い同盟国の言いなりになるな」と指南している。トランプ大統領はその指南に忠実であるようだ。

トランプ主義を非難するのは自由だが、安全保障をアメリカに依存する日本も他人事ではない。まずはトランプ大統領の政治姿勢を理解し、対応策を検討することが必要だ。

問題があるのはロシアだけではない

それでも「侵略者ロシア」はけしからんと考えている人々も多いだろう。それはそのとおりだが、重要なのは「ロシアだけが問題なのではない」ということだ。

米中を含め、力を有する大国は皆それぞれに横暴であり、問題なのである。そこで、ロシアとウクライナをめぐる欧米日で繰り返されている以下のような言説を吟味してみたい。

・ プーチンは「独裁者」であり、ロシアでは自由が抑圧されている
・ ロシアは国際法における侵略者である
・ ロシアはさらなる領土の拡大をもくろんでいるため、ウクライナを支援し、ロシアを止めなければ、何か大変なことが起こる
・ ウクライナを守るのは自由民主主義を守るために必要であるため、アメリカはウクライナを支援する義務がある
・ 今停戦すればロシアを利することになり、不公平だ(正義が行われない)

まず、プーチン大統領が独裁者かどうかであるが、プーチン大統領はロシアの法律に基づいて正当に選出されており、2月時点の支持率も88%と極めて高い。国民の73%はロシア国内の物事は正しい方向に進んでいると答えている。

次ページ世論調査機関の意外な素顔
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事