「地震で壊れにくい住宅」を妄信してはいけない訳 地震で「壊れる」と「倒れる」はイコールではない

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板状マンションでは住戸を横にいくつも並べるので、建物を上から見たときの形状は横長の長方形になります。短辺方向には住戸と住戸を隔てる大きな壁(戸境壁)があり、この壁により高い耐震性を持たせることができます。

では長辺方向はどうでしょうか。共用廊下側には玄関ドアがあり、採光・通風のための腰窓(窓の下端が腰くらいの高さにある窓)があります。

板状マンションの地震被害

バルコニー側はバルコニーに出るための掃き出し窓(窓の下端が床の高さにあり、人の出入りができる窓)があり、南側を向いていることが多いことから採光のための窓も大きくなりがちです。

住戸内部にはプランニング(部屋の配置決め)やリフォームに制約がかからないよう、基本的に壁を設けません。まとまった量の壁が確保できないため、主として柱と梁で地震に耐えなくてはなりません。

板状マンションではどのような地震被害が出るでしょうか。

短辺方向では、窓がある外側の壁にひび割れが生じている例はありますが、戸境壁が被害を受けることは少ないです。やはり壁の量が不足している長辺方向の被害のほうが目立ちます。

しかし長辺方向の柱や梁の損傷はそれほど大きくない場合が多く、一部の層が崩れてしまっているということもまずありません。

板状マンションの被害と言えば、「雑壁」が大きく損傷している場合が大半です。

雑壁とは、玄関ドアや窓などに挟まれた幅の狭い壁です。

長辺方向には壁が少ないと言っても、室内と室外を隔てる壁はあります。一昔前の古いマンションでは、窓やドアにより穴だらけになったこの壁も、他の壁と同様、鉄筋コンクリートでつくっていました。穴だらけの壁は「地震に耐えるための壁」としての規定を満たしておらず、構造計算上は無視されていました。

「存在はするけれど、構造計算上は見込まない壁」が雑壁です。

しかし、構造計算上、雑壁の強さや硬さを考慮するかどうかということと、実際に雑壁が地震の力を負担するかどうかということは関係がありません。柱や梁同様、建物を構成する部材の一部である以上、当然ながら雑壁にも力がかかります。

そして、壁の強さが不足していれば壊れます。

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