｢地震で壊れにくい住宅｣を妄信してはいけない訳 地震で｢壊れる｣と｢倒れる｣はイコールではない

何が悪さをするのでしょうか。

建物は強いものほど硬い傾向にあります。

2階が強いということは、2階が硬いということも意味します。硬い建物は柔らかい建物よりもガタガタと素早く揺れる傾向にあり、加速度が大きくなりやすいのです。

地震の力は建物に生じた加速度に比例しますから、2階が硬いことで1階に生じる力も大きくなってしまうのです。

また、地震を「エネルギー」という観点から考えても、2階が強いことの問題が見えます。

部分的な強さは、建物を弱くする

ゴムを伸ばして手を離すとパチンッと勢いよく戻るように、物体は変形することでエネルギーをため込むことができます。しかし、2階が強くて硬いとほとんど変形せず、エネルギーをため込めません。その分、1階が多くのエネルギーをため込まなくてはならなくなり、結果として1階の変形が大きくなってしまうのです。

強いということはいいことですが、それは全体が強い場合だけです。部分的な強さは、かえって建物を弱くしてしまいます。

建物が地震で「壊れる」ことと「倒れる」ことはイコールではありません。

どれだけボロボロに壊れてしまっても、倒れさえしなければ人命を護れる可能性が高いです。倒れるよりも壊れるほうがずっといいはずです。

もし、壊れやすいけれど倒れにくいマンションと、壊れにくいけれど倒れやすいマンションがあったとしたら、どちらを選ぶでしょうか。

先の理屈で言えば、前者を選ぶに決まっています。しかし、今は「壊れにくいけれど倒れやすいかもしれないマンション」が主流となっています。

中層マンションの多くが「板状（ばんじょう）」と呼ばれる構成になっています。

片側が共用廊下、反対側がバルコニーになっており、その間に各住戸が配置されています。

共用廊下側に2部屋、バルコニー側にリビングがあり、リビング横にもう1部屋で3LDKというプランが代表的です。マンションのチラシを見るのが好きな方はすぐピンとくるでしょう。