タスクの可視化が「仕事を回す最低条件」の理由 チームワークマネジメントを引き出す役割

チームを円滑に機能させる「タスクの整理整頓」
ーー恩田さんは、SaaSプロダクトやWeb開発などの事業を手がけるデジタルキューブの執行役員として活躍されています。そんな中で、タスク管理に対して抱えていた課題を教えてください。
恩田 2020年に入社し、受託案件のプロジェクト管理を支援する、いわゆるPMO(Project Management Office)にて働いていました。当時は社長がマネジメントを担う体制でしたが、複数のプロジェクトが同時進行しており、タスク管理の徹底が課題でした。

恩田 淳子氏
執行役員として、人材開発を担当。 これまで営業や編集、カスタマーサポートなど、さまざまな領域を経験
例えば、進捗確認は個別に担当者へ問い合わせる必要があったため、情報共有に手間取っていましたね。また、認識のずれからプロジェクトが滞ることもしばしばありました。
そこで着手したのが、「タスクの整理整頓」です。Backlogを活用したおかげで、案件の進捗が可視化され、チーム全体でスムーズにサポートできるようになりました。
ーーチーム全体の生産性向上に貢献する、「縁の下の力持ち」のような存在だったんですね。
恩田 プロジェクトの進捗を瞬時に把握できるようになったため、課題発生時に迅速に対応できるようになりました。情報共有がスムーズになり、プロジェクトの遅延リスクを早期に発見できるようになったのも大きなメリットでした。

タスクの進捗を可視化する「バックログスイーパー」
ーー恩田さんのような役割は、組織においてどのような重要性を持つのでしょうか?

原田 泰裕氏
原田 恩田さんのように、Backlogの利用状況を管理してタスクの整理や進捗を促す役割を、ヌーラボでは「バックログスイーパー」と呼んでいます。バックログスイーパーがタスクの整理や情報共有を行うことで、チーム全体の進捗が把握しやすくなり、業務の透明性が向上します。
具体的には、誰がどのタスクを担当し、現在どの段階にあるのかが明確になります。そのため、タスクの抜け漏れや重複を防ぎ、無駄な作業を削減できます。マネジャーはタスク管理の負担から解放され、本来の業務に集中しやすくなります。
また、バックログスイーパーはメンバーとフラットな立場でコミュニケーションを取る存在です。そのため、心理的安全性を確保しつつ、タスクの整理や進捗確認を円滑に進められます。結果として、メンバーは「指示された業務をこなす」のではなく、「自分の役割としてタスクに取り組む」意識を持ち、主体的に業務を進められるようになります。
このようにバックログスイーパーを置くことで、チーム全体のコミュニケーションが活性化し、より効率的なプロジェクト運営を実現します。
恩田 組織を動かしているのは、日々のタスクの積み重ねです。「たかがタスク」と軽んじることなく、一つひとつを丁寧に遂行することが重要です。バックログスイーパーを設け、タスクの担当者を含む複数人でタスクの進捗状況をチェックすることで、「複眼的な視点」が生まれ、より質の高いタスク管理が可能となるでしょう。
ただし、バックログスイーパーだけに頼るのも危険です。なぜなら「誰かが見てくれている」という安心感から、タスク管理の緩みが発生する可能性があるからです。バックログスイーパーはあくまでサポート役。チーム全体でタスク管理の意識を高め、協力してプロジェクトを進めていくことが大切です。
ーー近年、社内だけではなく、複数の組織やさまざまなスキルを持つ個人が連携してプロジェクトを進めるケースも増えています。そうした場合でも、バックログスイーパーは有効でしょうか。
原田 チームの生産性を高めるうえで、バックログスイーパーは大きな役割を果たします。さらに当社が提唱する、多様な専門性や価値観を持つ人々が集まり、共通の目標達成に向けて協力し合うための「チームワークマネジメント」という概念においても活用できます。
バックログスイーパーは、チームワークマネジメントの中でも、特にタスク管理や進捗の可視化などのワークマネジメントに大きく寄与し、チームの生産性を支えます。
とくに外部との連携においては、Backlogの使い方の統一やタスクの進捗共有など、細かな調整が必要となります。これらに時間を取られることなく、スムーズに連携を進めるためにも、バックログスイーパーの存在は欠かせません。彼らの存在によりマネジャーやリーダーの負担が軽減され、チームワークの強化につながります。
結果としてプロジェクト全体の成功を支える、まさに「チームの要」といえるでしょう。
Backlogという「知恵の宝庫」で自律型人材を育成
ーー現在、恩田さんは人材開発の業務でもBacklogをフル活用されているそうですね。
恩田 Backlogに過去のプロジェクトの記録が残っていることが、未経験の業務でもスムーズにスタートを切るうえで大きな助けとなります。過去の事例を参考にしながら業務を進めることができ、指導する側の手間が大幅に削減されるからです。
新入社員や若手社員は、「まずは過去のやり方をまねてみよう」という段階から始め、徐々に自分の進め方を確立します。そして過去の知見を土台にすることで、安心して業務に取り組める結果、自律的な成長につながります。
さらに、過去事例の分析が「もっといい方法はないか?」と改善を促すきっかけにもなります。結果として、個人のスキルアップだけでなく、チーム全体のレベルアップが期待できるでしょう。
そして、成長した人材が次のバックログスイーパーとして活躍します。このようにして、チーム全体が効率的に業務を回せる仕組みが整うのです。
原田 Backlogはタスクやプロジェクトのデータを蓄積していくので、過去の事例の成功や失敗を簡単に学ぶことができます。私も、以前あるプロジェクトのタスクをBacklogで作成する際、他部門から過去の類似プロジェクトについてBacklogで共有してもらいました。
そこには、過去の担当者が顧客とどのようなコミュニケーションを取っていたのか、どんな経緯があったのかなど、詳細な記録が残っていました。それを参考にすることで、同じ失敗をせずに、スムーズに業務を進められました。
Backlogは「知恵の宝庫」であり、組織全体の成長を支える基盤です。経験者はもちろん、未経験者でも過去の成功事例や失敗事例を学ぶことで、業務効率を向上させることができます。
ーーBacklogでタスク管理とコミュニケーションを集約しない場合に生じる、企業のリスクについてお聞かせください。
恩田 当社は「Backlogにない仕事は、仕事として存在しない」というメッセージを掲げています。Backlogでタスクを明確にし、誰が何をしているかを可視化することは、仕事を成り立たせるための最低条件です。
タスク管理とコミュニケーションを一元化しないと、「どこで話したか」、「誰が何を決めたか」がわからなくなり、情報が迷子になります。さらに、メールやチャットツールを併用すると「言った」、「言わない」の問題が発生しやすくなります。
そのため、タスクに関するやり取りはすべてBacklogに集約しています。進行状況を明確にすることで、スムーズな業務遂行が可能になっています。Backlogは、単なるタスク管理ツールではなく、組織の成長を支える基盤として不可欠なツールなのです。